兵庫慎司のブログ

音楽などのライター、兵庫慎司のブログです。

岡崎体育「感情のピクセル」に怒っている人は、何がそんなにカチンときたのか

  ご存知だろうが、岡崎体育の新曲、というか新曲「感情のピクセル」とそのMVが炎上している。

  5月11日にYoutubeの公式チャンネルにアップされ、5月17日17時の時点で再生回数は1,884,000回を超えている。僕はファースト・アルバムのリリース・タイミングで、週刊SPA!で彼にインタビューする機会に恵まれたのだが、その時は「MUSIC VIDEO」の次にセカンドインパクトを引き起こせる自信があるからこそあれをやった、一発屋で終わるつもりは毛頭ない、あれを撮る以前から2発目3発目の構想は完全に頭の中にある、と言っていた。それを現実に証明してみせた、ということなのだが。

  これが、曲もMVもいわゆる今人気のラウド・ロック・バンドの王道フォーマットを模していて、すべてお手本どおりに高性能に作った上で、歌詞だけばかばかしくおもしろくしたものだったことで、「ラウド・ロック・シーンをディスっている」「特定のバンドを笑いものにしている」という非難の声が殺到しているようなのだ。

  P.T.P等で活躍してきたギタリストでありプロデューサーであるPABLOの参加により、クオリティがいっそう本物になっていることが、さらに火に油を注いだ、という見方もできる。

 

www.youtube.com

   ご本人は当初、ツイッター

「なんか、ラウドロックシーンをディスってるやんけみたいな書き込みとかつぶやきめっちゃあるけど ディスってたら半年かけて曲書いたりMV撮影したりしようとは僕は思わないです」

   と、冷静に正論で返していたが、

 「今作に批判や風刺はないと弁明したけど、僕の思いや考えとは違った解釈をしている人たちがまだたくさんいる。最初はこれ以上は触れずにいようと思っていたけど、ついにその人たちが特定のアーティストやバンドに迷惑をかけにいってる事をさっき知って、流石に僕も黙っていられなくなった。」

 「僕のやっていることが不愉快だったら僕にだけその気持ちを向けてほしい。他のアーティストに迷惑がかかるのなら、僕は製作の自由度について今後考える必要がある。迷惑をかけてしまったアーティストの方、本当にごめんなさい。」

   と、なんというか、大変に気の毒なことになっている。

  僕は岡崎体育が好きなので、やっぱり胸が痛む。「気にしすぎ!」「相手にするな!」と、肩を持ちたい。持ちたいが、ただ持たれたって却って迷惑、というような可能性もあるので、勝手ながら、ちょっと踏み込んで考えてみたい。

  というか、考えてみることが、彼の「ディスじゃない」という気持ちが真実であることを示す結果になればいいなあと思う。

 

  少し前に、この「感情のピクセル」のMVの共同制作者である映像作家、寿司くんことこやまたくやのバンド、ヤバイTシャツ屋さんROCKIN’ON JAPANでインタビューした時に、今回のこれと近い話になった。

  曰く、ヤバTの「メロコアバンドのアルバムの3曲目ぐらいによく収録されてる感じの曲」に代表されるような曲は、よく「メロコアをバカにしてる」とか言われるけど、そんなつもりはない、と。自分が観て聴いてきたかっこいいものを自分もやってみたい、という思いでそういう曲を書いているんだけど、恥ずかしがり屋なので歌詞まではマネできなかった、そこに自分の人間性が加わったらこんな歌詞になってしまった、と。

  かっこいいのが好きだけど、自分がそのかっこいいのをやったら気持ち悪い、という思いで、その代わりに自分が歌えるものを探したらこうなった、という。

  でもそれをやったら、歌詞も含めてかっこいいことをやっているほかのバンドへの批評として成立してしまう結果になりますよね。たとえば「歌詞が英語であること」をネタにした「ヤバみ」も、「じゃあ、普通に英語で歌ってる他の日本のバンドってなんなわけ?」っていうふうに機能しちゃいますよね。

  と言ったら、「そうなんですよ!」と答えられた。やはり、そこが悩みのタネらしい。ただ、「でも僕らのそれは、下からの目線、かっこいいことができない負け惜しみの目線だからいいんじゃないかと思ってるんです」とも言っていた。それ、素直な気持ちなのだろうと思う。

 

  にしても、さすが同志というか、岡崎体育のこのたびの葛藤と一緒だと思う。

  では。岡崎体育に、あるいはヤバイTシャツ屋さんに怒っている人たちは、彼らのやっていることの、何がそんなにカチンとくるのか。

 

  まず、岡崎体育にとってのラウド・ロック、こやまたくやにとってのパンクは、純粋に好きな音楽のひとつだからやっているわけだが、ただ、「好きじゃなかったらここまでクオリティの高いものを作れないでしょ」という反論は、あんまり芯を食ってないと思う。

  好きでなくても、作れる人は作れる。2011年にマキシマム ザ ホルモンが曲とMVを作ってリリースしなかった「小さな君の手」を思い出せばよくわかる。

  あれ、当時人気を博していた、前向きな清い心で愛や幸せを高らかに歌う健全なJ-POP、そのお手本みたいな曲を作って、最後にそのMVが映っているテレビにマキシマムザ亮君がゲーッてゲロかけて新曲「maximum the hormone」が始まる、というものだった。

  「そういう曲」として本当によくできていたし、MVも然りで、ホルモンを知らない人なら素直に信じるだろうな、というレベルだった。

  あれは明確に悪意だと受け取っていいだろうし、ご本人たちも望むところだろうと思う。で、岡崎体育やヤバTはそれと同じか? という話だ。違いますよね、どう見ても。

 

  じゃあ何と一緒なのでしょうか。たとえば清水ミチコの一連のネタ、「スピッツ作曲法」「ドリカム作曲法」「松任谷由実作曲法」「ミスチル作曲法」と同じなのではないか、という考え方はどうだろう。

  スピッツ風のアレンジで、スピッツ風のコード進行で、マサムネ風のメロディにのせて「後半はいつも伸ばしがち ゆっくりとテンポ下げる」とか歌うあれ。先日『ARABAKI ROCK FEST.17』で新ネタ「サカナクション作曲法」を観て、血を吐くほど笑いました。「丁寧」とかサビにばんばん出てきて。

  つまり。音楽は「型」である。その音楽を好きであるということは、その型を好きだということである。で、「型」なんだから、その「型」をなぞれば、つまりマニュアルに従えば、能力のあるミュージシャンなら、それなりのクオリティのものが作れてしまう。

  という事実を突きつけてくるから、カチンとくるのではないか。どちらかというと、自分の好きなバンドとかジャンルとかをバカにされたからカチンとくるというよりも、その「型」を好きな自分をバカにされたような気分になる、だから頭にくるのではないかと思う。

  現に岡崎体育、ネタにされた(と言われている)バンドたちは誰も怒っていない、むしろおもしろがったり彼を擁護したりしているあたりも、それを示しているのではないかと思う。

 

  思うに、「型」が好き、というのを、音楽好きとしてあまりうれしいことだと捉えていない人がいる、ということなのではないだろうか。

  そのアーティストのキャラクターが好き、考えていることが好き、伝えてくることが好き、曲が好き、というのはいいけど、「型」はなんかイヤ、自分がカテゴライズされやすいその他大勢人間みたいな好みだってことになるので。という抵抗感が、無意識にあるのではないか、と。

  しかも清水ミチコ的に、個別のアーティストそれぞれの「型」をネタにされている分にはまだいいけど、ジャンルでくくって「型」にされてしまうと、自分はアーティストのファンじゃなくてその「型」のファン、みたいなことになってしまうし。

  もちろん、みんながそうだ、というわけではない。俺メタル好き、私テクノ好き、みたいに、ジャンルが好き、「型」が好きであることを自分で普通に認めている人が大多数なんだけど、自分はそうじゃないと思っているから、そこをつつかれると怒り出す少数派がいるんじゃないか、と。

  もしくは、自分の中にある「型」好き要素自体に無自覚だからこそカチンとくる、というのもあるかもしれない。

 

  なんにせよ。「型」を提示されることで、その分自分の好きな音楽のマジックが下がってしまった、魔法のカラクリを見せられてしまった、そんな気持ちになるから腹が立つのではないか、という推測です。

  あ、「怒ってる人たちはみんなこれが理由なのでは」ということではありません。「こういう理由の人もいるのでは」という、ひとつの可能性の推測です。

 

  と、他人事みたいに書いているが、最近自分がそういう思いをしたから、このことに思い当たったのだった。腹が立ったわけではないけど。

  ダンス・ミュージックが好き、テクノよりもハウスが好き、ハウスなら歌もので生音も入ったものが好き……みたいな、自覚しているものとはまた別に、好きな音楽の「型」が自分にあったことに、気づかされたのだ。

  僕はCaravanがとても好きだ。仕事での接点がなくなっていたここ数年はチケットを買ってライブに通っていた、ワンマンはもちろん弾き語りでちょっと出るみたいなイベントまで足を運んでいたくらいのファンだ。最近また仕事での接点ができたので、招待で入れてもらったりしているのだが、Caravan本人は、僕の音楽ライターとしての得意ジャンルをうっすらご存知だったようで、Theピーズとかフラワーカンパニーズとか、ウルフルズとかフラワーカンパニーズとか、ユニコーンとかフラワーカンパニーズとか、電気グルーヴとかフラワーカンパニーズとかを日々追っかけているこの人が、なんで俺の音楽にそんなに熱心なんだ? と、素朴に不思議だったようだ。

  これまでに二度、面と向かって訊かれたことがある。「なんで好きなんですか? どこが好きなんですか?」と。

  で、一度目に言われた時は「自由で孤独なところじゃないかなあ」とか、「日本語のメロディへの載せ方が自然だからじゃないかなあ」とか、それらしいことを言っていたのだが、二度目に言われた時に、ハタと思い当たった。

 

  もう20年近く前だが、僕はDAY ONEというブリストルの二人組にめちゃめちゃハマったことがある。MASSIVE ATACKの3Dのレーベルから出てきた人たちで、確かアルバム2枚くらいしか出してないんだけど、めったやたらと好きになってしまって、仕事でイギリスに行った時にソーホーのレコード屋を回って彼らの12インチを探したりしていた。

  で、そのDAY ONE、今思うと「型」がCaravanに近いのだ。打ち込み、ただし四つ打ちじゃなくてブレイクビーツ寄り。アコースティック・ギター多用。ラップっぽい抑揚が小さめなメロディ。あんまり声を張らない、会話に近い歌唱法。というあたりが。

  なんで。と言われると、説明しようがない。ただその「型」が好きなのだ、生理的に。ブレイクビーツにアコギでラップっぽい、っていうのを発明したの、ベックじゃん。はい。ベックも好きです。ただ、DAY ONE・Caravanとは入る箱が違うのです、自分の中で。

 

  もう一例。Charisma.com、最初の作品からとても好きなのだが、あれも歌詞の巧みさとかいう以前に、自分の中でRIP SLYMEと同じ箱に入っている、だから好きなのだということに、気がついてしまった。

  ラップもの、好きだけど、ハウス好きとしては普通のヒップホップはBPMが遅すぎる、BMP120~130くらいの幅のハウス寄りの音色のトラックでラップしてくれるとバッチリ、という「型」の好みが自分にはあって、RIP SLYME以来、久々にそこにハマったのがCharisma.comだった、という話です。

  そうか、だから一時期のm-floも好きだったのか、俺は。

 

  しかし、僕の好きな「型」の話になると、「カテゴライズされやすいその他大勢人間みたい」とは言えない。むしろ、「『あーあ、やる気ない、なんであんたなんか相手しなきゃいけないんだろう』みたいな気持ちがにじんだネガティブトークをしながら、おざなりに、それでいて突然あらぬところをいじるなどのオプションを加えたプレイでお願いします」というややこしいオーダーを風俗店でして嬢を困らせる客みたいで、それはそれで恥ずかしい。

  というか、その方がはるかに恥ずかしい。

 

  以上です。長くてすみません。

  いかがでしょう、岡崎体育にお怒りの方。ご自分がなぜそんなに頭にきているかを解析することで、少しクールダウンしていただけたでしょうか。

  そういう人はそもそも俺のブログなんか読まねえよ。という、それ以前の問題が、まだなんにも解決されていないのだった。

12年ぶりに『ARABAKI ROCK FEST.』に行った

  4月29・30日、『ARABAKI ROCK FEST.17』に行った。

 『ARABAKI』に行ったのは10年以上前に1回だけ、海っぺりで開催された時。確か、その翌年から今のエコキャンプみちのくに会場が移ったんじゃなかったっけ。と、調べてみたら、2005年でした。仙台港

  サイトを見たら、出演者、THE BAND HAS NO NAME忌野清志郎&NICE MIDDLE with NEW BLUE DAY HORNSやELLEGARDENなどの名前があって、時の流れを感じました。

  あと、現場で今のハナレグミとレキシの事務所の社長にばったり会った記憶があるんだけど、どちらの名前もないし、この時SUPER BUTTER DOGは活動休止していたし、誰の現場でいらしていたのか。永積崇がゲストでどこかのステージに出ていたとかそういうことなのか、それともほかのバンドの手伝いかなんかだったんだろうか。

  というのが不思議ですが、そんなことは大きなお世話だと思います。12年も前だし。

  ちなみに今年は出くわしませんでした。レキシはしっかり観ましたが。びっちり満員のオーディエンスの、INAHO所有率の高さに笑いました。「KATOKU」を初めて生で聴けてうれしかった。

 

  要は、エコキャンプみちのくでの『ARABAKI』に今さら初めて行った、ってことなんだけど、びっくりするくらい快適だった。

  天気よかったので暑さも寒さも大したことなかったし、芝生もしくはアスファルトの通路が多くて、フェスつきものの砂埃もほぼなかったし(2日目の後半にちょっとあったくらい)。

  何より、ロケーションの最高さに「こんないいとこだったんですね、知らなくて失礼しました」と、つくづく思った。ひろーいキャンプ場で、緑に包まれていて、遠くに雪山が見えて。

  という時点で大変気分がいい上に、ステージからステージはそこそこ離れていてけっこう歩くんだけど、フジや朝霧と違ってほぼ平地でアップダウンがないんですね、エコキャンプみちのく。あとでスマホを見たら2日とも24キロくらい歩いていたけど、その平地っぷりのおかげで、さして疲れなかった。

  いいフェスだなあ。なあんでフリーになった2年前から来なかったかなあ俺、と、自分を責めたくなりました。

  ただ、仙台駅からのシャトルバスは地獄のように並ぶ、2時間待ちとかあたりまえ、というのが、去年までの情報で気になっていたんだけど、今年からシャトルバスのチケットを「朝8時台」「9時台」というふうに分けて売るようになったことで、それも解消されていた。

  8時台は売り切れていて9時台を買ったんだけど、仙台駅に8時半について、9時ちょっと前から並んで、9時20分にはバスに乗れて出発。帰りも、初日は「今帰ったら絶対混むよなあ」という時間にバス乗り場に向かったんだけど、10分くらいしか待たなかったし。

  新幹線が停まる駅からすぐバスに乗れて、渋滞ありでも1時間半くらいで会場に着くのって、野外フェスとして、相当便利な方だと思う。

 

  いろんなバンドを観て、そのたびにツイートしたりしました。

  『Theピーズ30周年スペシャル』に関しては、某ウェブメディアにレポを書いて入稿ずみなので、連休明けくらいにはアップされると思います。

 ※追記:アップされました。こちらです。

realsound.jp

   で。4/29荒吐ステージのフラワーカンパニーズ

  『OTODAMA-音魂-』レベルのホームっぷりで、とてもうれしいものがありました。

  「深夜高速」で始まって「真冬の盆踊り」で終わる、その間にニューシングルの「あまくない」と「最後にゃなんとかなるだろう」をはさむ、というセットリストも、とてもよかった。というか、それが大正解だったことが、オーディエンスのリアクションを見ていてわかった。

  「あまくない」の間奏明けで小西がコケて、グレートもひっぱられてコケていたのが、唯一惜しかったところでしたが、それもお客さんの愛に救われていたというか、愛で帳消しになっていたというか。

  終演後にグレートに会ったら超反省モードでしたが。

 

  あと、天気いいってうれしいなあ、と朝から何度も思っていた理由が、この1週間前=4/22日比谷野音フラワーカンパニーズの時に雨に打たれたからだ、ということを、思い出したりもしました。

 

  それから、その日比谷野音の時に、小西がドラムセットにロートタムを組み込んでいてびっくりしたが、それがこの日はなくなっていた。

 なんで? ときいたら、「回線が足りないから持って来るなって言われた」というお答えでした。

 ロートタムって何?って方は、各自検索を。

 小西や私の世代では「BOOWY高橋まこと」「REBECCA小田原豊」「テリー・ボジオ」でおなじみのやつです。

 

フラワーカンパニーズ 2017年4月29日『ARABAKI ROCK FEST.

荒吐ステージ 19:00

1 深夜高速

2 脳内百景

3 消えぞこない

4 あまくない

5 最後にゃなんとかなるだろう

6 真冬の盆踊り

2017年4月22日土曜日、フラワーカンパニーズ7回目の日比谷野外大音楽堂ワンマン

  日本武道館公演を発表した前回から2年ぶり7回目、フラワーカンパニーズ日比谷野外大音楽堂が4月22日に行われた。

  開場ちょっとあとに雨が降り始めて終演後まで降り続き、メンバーはMCのたびにそのことを残念がったりお客さんを心配したりしていたが、小降りだったし、しっかり雨対策ができているお客さんが大半だったので、つらい空気にはならなかった。

  雨が降り始めると同時に、雨具を着たり荷物をビニール袋に詰めたり、一斉にきびきび動き始めるお客さんたちの姿に「さすがフラカンファン」とか「フジロックレベルだなこれ」とか思いました。

 

  で。武道館をやったことが大きいのか、この日比谷野音は、いつもライブに来てくれる人のために、聴き慣れた定番以外の曲を多くやる、懐かしい曲からも選ぶ、もちろん新しい曲もやるがおなじみの流れとは異なる曲順にトライする、そういうライブとして位置づけられていたように感じた。

  ツアー『フラカン28号』自体が、ちょっとそういう「久々な曲もやります」な感じになっているが、それをさらに押し進めたような。1曲目、アンコールの定番曲「真冬の盆踊り」で始まったし。

 

  以下、セットリスト。

1 真冬の盆踊り(15thシングル 2002年/8th『発熱の男』2003年)

2 脳内百景(11th『脳内百景』2006年)

3 三十三年寝太郎BOP(ミニアルバム『夢のおかわり』2015年)

4 Mr.LOVE DOG(4th『マンモスフラワー』1998年)

5 チェスト(13th『チェスト!チェスト!チェスト!』2010年)

6 夜空の太陽(23thシングル/2013年)

7 すべての若さなき野郎ども(24thシングル『あまくない』2017年)

8 感じてくれ(15th『Stayin’ Alive』2015年)

9 口笛放浪記(9th『東京タワー』2003年)

10 あまくない(24thシングル『あまくない』2017年)

11 日々のあぶく(13th『チェスト!チェスト!チェスト!』2010年)

12 靴下(4thシングル 1997年/ベストアルバム『ヤングフラワーズ』1997年)

13 大人の子守唄(12th『たましいによろしく』2008年)

14 虹の雨あがり(4th『マンモスフラワー』1998年)

15 最後にゃなんとかなるだろう(24thシングル『あまくない』2017年)

16ホップ ステップ ヤング(4th『マンモスフラワー』1998年)

17 終わらないツアー(13th『チェスト!チェスト!チェスト!』2010年)

18 消えぞこない(ミニアルバム『夢のおかわり』2015年)

 

アンコール1

19 ハイエース(新曲)

20 とどめをハデにくれ(24thシングル『あまくない』2017年)

21 TEEN AGE DREAM(13th『チェスト!チェスト!チェスト!』2010年 ※初回限定盤のみ収録)

 

アンコール2

22 東京タワー(9th『東京タワー』2003年)

23 ロックンロール(14th『ハッピーエンド』2012年)

 

  以上、僕も「あれ、この曲どのアルバムだっけ」って曲がいくつかあったので、そのへんも調べ直して(    )で足しました。「靴下」のように、後にアルバム再発の時にボーナストラックで追加で収録されたパターンもありますが、そういうのはスルーしています。

  しかし、こうして見直すと、いいセットリストですね、これ。

 

  あと3つ。

 

・アンコールのTheピーズ「とどめをハデにくれ」のカバー、シングルではアコースティック・バージョンだけどこの日はバンド・バージョン。

  とてもかっこよかったけど、圭介の歌い方が微妙にオリジナルと違うところが気になる、CDでもライブでも。サビの「思い切り深くダメ」の「思い」の入りが、はるさんの歌い方よりも遅いところとか。

  で、それ、無意識らしい。というか、本人はそのとおり歌ってるつもりらしい。先日、フラカンのFC会報「痛快ブック」の対談でTheピーズのはるさんと会った時(次号に載ります)、「聴いたよ。ちょっと変えてんだね」と言われて「え? そのまま歌ってるつもりなんですけど、どこがですか?」とか言ってたし、圭介。

  そういうもんなんですね。ボーカリストによって歌いグセの感覚が違う、みたいなことなんだと思います。

  なお、この曲をやったアンコールでは、メンバー、Theピーズ6/9武道館応援Tシャツを着ていました。

  ちなみにはるさん、観に来られていました(あとで自身のブログでもそのことを書いていた)。開演前に、「降ってきたねえ、ヤバいなあ、また俺のせいだって言われる」と漏らしておられました。

 

・ライブ後半で圭介、雨で濡れた床の上をだーっとヘッドスライディングしていた。たぶん2回ぐらい(だから服が濡れていたのです)。

  それを見ながら、ああ、昔も雨降るとヘッドスライディングしてたよなあ、と思い出した。で、そういえば昔は、助走してゴロゴロゴロって回転してパッと立つ、というアクションもよくやっていたなあ、それ以外にもいろいろ激しく動いていたなあ、ということも思い出した。今でもよく動くボーカリストだけど、危ない動きはやらなくなった。子供の頃って転んでも大したことないけど大人が転ぶと大ダメージ、というのなんかと同じなのだと思う。

  若い頃の圭介、アクションが激しすぎてケガばかりしていたし。デビュー前に原宿ホコ天でやった時、モニターかなんかに頭をぶつけて大流血したこともあった。そのあと川崎クラブチッタかどっかでも一回あった気がする、流血。

  そもそも僕が初めてフラカンのライブを観た時も、唇の両端から出血していた。ハープを吹く度に強く口に押しつけすぎて血が出る、というボーカリストだったのでした、当時の圭介さんは。今調べたら、1993年9月21日の下北沢シェルターでした。

 

・アンコール一発目でやった新曲「ハイエース」が、ちょっとびっくりするくらいよかった。2004年に「深夜高速」を歌ったバンドが、その13年後にどうなっているのか、どんな気持ちで生きているのかをそのまんま、かつすばらしい言葉のチョイスで言葉にした歌詞といい、静かに始まって途中からドカーンとなる曲調といい(雑にたとえると真心ブラザーズの「素晴らしきこの世界」的な)、これ、フラカンの新しい名曲として育っていくと思う。

  開演前に「今日新曲やるんですよ」と歌詞を見せてもらって、読んで、思わずテンション上がって「これいいじゃん!」と言ったら、グレートに「そうだよ。いいから今日やるんだよ」とひっくい温度で返されて、ちょっとしょんぼりしましたが。

 

  それから。次の東京のワンマンは8月25日金曜日にリキッドルームで行うことと、それに間に合うかどうかわからないがそれくらいの時期のリリースを目指して、ニュー・アルバムを制作中であることが、発表になりました。

盗撮の話

  2017年4月12日夜、飲んだ帰りの神奈川県警警部補が、駅の階段で女子高生のスカートの中を携帯で盗撮して捕まった、という事件。

  これ。

www.jiji.co.jp

  今朝(4月13日)、ジョギング中に聴いていた『伊集院光とらじお』のニュースコーナーでこの事件を知った。で、急に思い出した、この本のことを。

www.amazon.co.jp

  僕が中学の頃のベストセラー。1981年1月に出ているので、中学に上がる直前に発売されたってことか。

  当時売れに売れたこの本、「盗撮のすすめ」なのです。

スカートの中とか胸元とか、街のこういう場所ではこんなエロい写真が撮れますよ、というのを、モデルを使って実践している。

  あまりにも売れたので、パート2とパート3も出た。3は別のカメラマンだった気がするが。

 

  このカメラマン、確かこのあと石川さゆりと結婚したんじゃなかったっけ。

  と思い出して、調べてみた。正解だった。というか、この馬場憲治という方、もともとホリプロの社員で、フリーライターになってその延長でこの本を出したらしい。で、そのあとタレントっぽくなってテレビとかに出ていた記憶もある。

  高校時代に坂本龍一と共に学生運動をしていた、という記述もウィキにありました。へえー。

 

  自分で持っていたんだか、友達に借りたんだか忘れたが、もちろん僕も読んだ。

  というか、同年代の当時中学生男子で、「読んでない」「知らない」という人を探す方が難しいと思う。

  で、読んだからといって実践する勇気はなかったが、実践した人もいっぱいいただろう。

  この何年かあと、アイドルとかが出るイベントで素人が撮った、胸元やパンチラのセクシーショットを投稿するタイプの雑誌が増えたが、あれのそもそものルーツもこの本だったのかも、という気もする。

 

  これがベストセラーっていうぐらい売れて、その著者がタレント化するくらいメジャーになったってことは、当時これに対して「けしからん」って声は、あったんだろうけど、少なかったってことですよね。

  ほんの十数年前までは道路が駐車中のクルマだらけだったり、道端に自転車を停めておいても平気だったり、それこそ道で普通にタバコが吸えたりする世の中だった、でも今は全部ダメ、というのは、正しいんだけどちょっと息苦しいなあ、と思うことも、なくもない。

  が、この案件に関しては、素直に、昔の日本ってむちゃくちゃだったんだなあと思います。

  当時は自分もなんにも疑問を感じてなかったけど、という事実まで含めて。

 

  だって、これがOKな世の中だったら、田代まさしの最初のつまずきだってスルーされたかもしれないし。

  2000年1月の出来事でした。現場が東横線都立大学駅、という、自分の生活範囲内の駅だったことに驚いたものです。

  で、田代まさし好きだったので、当時所属していたbuzzという音楽雑誌の中のカルチャーコーナーみたいなページで、後輩とふたりで「マーシーを擁護する!」という趣旨の対談を行ったのを、今思い出しました。

  いったい何をどう擁護したのかは憶えていませんが。

  というか、どう擁護すんだよ俺、と、今になると思いますが。

田中貴プレゼンツ『Such A Night』のこと

  サニーデイ・サービスのベーシスト、田中貴プレゼンツの「Such A Night」という夜中のDJイベント(この「DJイベント」という呼称、おっさんくさくてイヤなんだけど、『パーティー』という呼び方では伝わらない人には伝わらないのでやむを得ずそう書きます)を、彼と一緒に続けている。

  最初は3ヵ月にいっぺんくらいのペースで、途中で2ヵ月に1回になって、今は、本来は2ヵ月に1回やりたいんだけど田中の本業が忙しくて、なかなかそうもいかなくなってきて、「2ヵ月か3ヵ月か4ヵ月に1回」みたいな、不定期のイベントになっている。

  いちばん最近やったのは2月25日で、通算35回目でした。

 

  そもそもの発端は2008年までさかのぼる。

  フラワーカンパニーズのグレートマエカワは、当時フェスとかでよくDJをやっていたのだが、それは「みんなでラジオ体操をやる」とか「坂本九の『ジェンカ』かけてグレートもフロアに下りてみんなと一緒にジェンカをやる」というような、パフォーマンスDJとでも呼ぶんでしょうか、そんなスタイルだった。

  で、一緒に飲んでいる時に、あれはあれでいいけど、ああいうんじゃなくて、踊れなくてもいいから飲みながら自分が好きな曲をかけるようなDJもやりたい、お客さんも聴いてても聴いてなくてもいいようなゆるいやつがいい、とか言うので、「じゃあやろうよ」と答えた。

  当時、曽我部恵一が下北沢で始めたばかりだった、中古レコードショップ&カフェ、CITY COUNTRY CITYが、ライブやDJイベントもやっているお店だったので、相談してみた。入場無料の代わりにチャージバックもなしという形ならできますよ、ということだったので、それでお願いした。そのイベントの日は、普段はもっと遅くまでやっている通常営業を23時でいったん終わらせて、フロアのテーブルをどけたりして準備して、0時から5時までやりましょう、ということになった。

 

  ただ、グレートと僕、ふたりだけで5時間というのはちょっとしんどい、どうしよう?という話をしている時に、グレートが「田中呼ぶ?」と発案した。

  当時の田中は、スネオヘアーのマネージャーのようなディレクターのようなプロデューサーのようなライブ制作のような仕事をしながら、ちょこちょこベーシストとしての仕事も再開している時期だった。ような気がするが、声をかけたら「やる」と言うので、3人で始めた。

  スタンディングで50人も入れば満員の店で、入場無料だったので、毎回大盛況になった。

  ただ、グレートのDJは、当初言っていたような「ゆるいやつ」では全然なかったけど。結局1回目からジェンカやってたし。

 

  ちなみにその1回目の開催、2008年7月18日だったんだけど、それ、今考えるとサニーデイ・サービスが『RISING SUN ROCK FESTIVAL』で再結成ライブをやります、という発表の1週間前だった。

  で、その夜、イベントやってたら曽我部恵一丸山晴茂が来て、明け方4時くらいに3人ともいないことに気がついて外の非常階段を見たら、そこで3人が話していて、「これは……もしかして……」と、非常にドキドキモヤモヤしたのを、今でも憶えています。

  やはり、そこで再結成の具体的な話をしていたそうです。その時は教えてくれませんでしたが。あたりまえか。

  2016年の夏にSPICEで行った、フラカン×サニーデイ座談会でその話もしたので、詳しくはそちらをどうぞ。

spice.eplus.jp

   で。そのまま何回か続けていて、メジャー復帰して忙しくなったグレートの都合が合わない時は、アナログフィッシュ佐々木健太郎を招いて「Bar健太郎」として行ったりもしていたんだけど、CCCで充分な音量でイベントをやることが、だんだん難しくなってきた。

  という頃に、田中貴は自分で『Such A Night』というイベントをやった。三宿Webに「イベントやりません?」と誘われて、ラーメン屋仲間(って田中はラーメン屋ではないが)とかで集まって、とりあえず1回やってみた、というような感じだったらしい。

  それで、2回目どうしよう、お店には続けるとも1回だけとも言ってないし、みたいな話をするので、「あ、じゃあ俺とやる?」と持ちかけた。

 

  その『Such A Night Vol.2』を行ったのが、2009年10月16日。

  今、記録を見たら、田中と僕のほかにゲストDJで、ホフディラン小宮山雄飛と、当時活動休止中だったウルフルズサンコンJr.に来てもらっている。

  以降、田中と僕はレギュラー、グレートは「なるべく」レギュラー、プラスゲストDJ、という形で、2017年現在まで続いている。

 

  過去ゲストDJで来てくれた方、書き出してみます。敬称略。

 

  松尾スズキ/河井克夫/タカイチ★ヤング/曽我部恵一/ウルフルケイスケ/RAM RIDER/大根仁/森山未來(シークレットで)/やついいちろう/佐々木健太郎/スネオヘアー/渡辺祐/ぶどう from OKAMOTO’S(オカモトレイジハマ・オカモト)/Super Benjamin(福岡晃子&菊地美佐子)/西浦謙助/IMALU/オクイシュージ/村上純/小里誠/大谷ノブ彦/松本素生/新井仁/セミノスキ(村杉蝉之介)/長谷川プリティ敬祐/ナガイケジョー/ウエノコウジ/奥野真哉/小田島等/ジェットセイヤ

 

  複数回お願いした方も多い。特に曽我部さんや松尾さんは、何度も出てくださっている。

  にしても、田中と私とグレートの誰かがツテあった方を誘いまくってここまで来たのだなあ、ということがわかります、こうしてお名前を並べてみると。

  ミュージシャン、DJ、俳優、編集者、監督。芸能人もいる。芸人さんも、やついいちろうダイノジ大谷はほぼ本業状態でDJやってるけど、しずる村上純はレアだと思う。

あと、IMALUはやついくんに紹介してもらったんだった。まだ今ほどテレビに出ていなかった頃です。

 

  2017年2月25日の『Vol.35』は、go!go!vanillasの長谷川プリティ敬祐&ジェットセイヤが出てくれた。セイヤは人生初DJ。プリティには2年前にも来てもらったんだけど、その頃とはファンの集まり方と盛り上がり方が全然違って、そうかあ、バニラズ売れたんだなあ、と、しみじみと思ったりもしました。

  あと、プリティはフラカン好きで、デビュー前の頃『Barグレート』に遊びに来てくれたことがあるそうです。という話にも、そうか、もうそんな年月が経っているんだなあ……と、しみじみします。

 

  そんなふうに続いている『Such A Night』、次回は2017年4月1日土曜日に行います。

  23時スタート、三宿Webにて。ゲストは、久々のアナログフィッシュ佐々木健太郎と、初登場のART-SCHOOL木下理樹

  健太郎に「最近リッキーと飲んだんですけど、誘いません?」と言われて、「あ、そういえば声かけたことなかった!」と気がついた。

  楽しみです。ふたりとも飲み始めると終わりがない、そして際限なく酔っぱらっていくタイプなのが、ちょっとだけ気がかりですが。

 

  あと、このラインナップで行うことを発表した時に、アナログフィッシュ、新しい作品を作るために4月9日を区切りにしばらくライブ活動休止期間に入るのに、いいのかなあ? みたいなツイートを見かけた。

  確かにそう宣言している。バンドだけではなく、健太郎の弾き語りライブも休むと。

 

  でも健太郎さん、ライブ活動を休んでいようが、曲作りを進めていようが、毎夜お酒はお飲みになるわけですよね。そのお飲みになる場所が、下北沢あたりの居酒屋から三宿Webになる、というだけなのでは? ならばお願いしてもいいのでは?

  と思い、マネージャー氏におうかがいを立てたら「いいですよ」ということだったので、お願いしたのでした。

 

  ただ、ひとつ心配なことがある。

  健太郎、前回来てもらったのは1年前、2016年4月8日だったのだが、その夜彼は、三宿Webにアコースティック・ギターを背負って現れたのだ。

  「あ、練習帰りだったの?」「いや……歌おうかなと思って」 

   「えっ? ここで?」「……はい」

  で。歌いました。急だったもんでギターのPA出しも歌用のマイクのセットも間に合わず、「ごめん、生でやって」と言ったら、ギター抱えてフロアに下りていき、ねり歩きながら生声&生ギターで熱唱しまくり。

  とてもよかった。そして、ウケていた。遊びに来ていた私の知人などは、それまで健太郎のことを「田中さんのイベントにたまに来てDJやって飲んで踊り狂って酔いつぶれる人」としてしか認識していなかったが、それですっかりハマってしまい、アナログフィッシュはもちろん彼の弾き語りライブにも行くようになったという。

 

  なので、「健太郎、今回もギター持ってくるかもな」「でもライブお休み宣言をしている時期にここで歌うのってどうなのかしら」「かと言って歌うなって言うのもおかしいしなあ」「あ、4月9日より前だからいいのかなあ」などと、心配なような楽しみなようなやっぱり心配なような思いが交差しながら、当日を待っているわけなのでした。

 

  とりあえず、健太郎には、歌うなとも歌ってくれとも言っていません。

  言わずに当日を迎えようと思います。

  アナログ、アート、サニーデイのファンの皆様、どれでもなくても音楽やお酒が好きな方、ぜひ。

 

 

田中貴プレゼンツ 『Such A Night Vol.36』

2017.4.1(Sat) @ 三宿Web

OPEN/23:00 2,000円(1ドリンク付)

【DJ's】木下理樹(ART-SCHOOL,killingBoy)/佐々木健太郎(アナログフィッシュ)/田中貴(サニーデイ・サービス)/兵庫慎司

20歳未満入場NG・IDチェックあり

 

三宿Web 154-0051 東京都世田谷区池尻3-30-10 B1F

TEL&FAX:03-3422-1405 http://www.m-web.tv/

電気グルーヴが『TROPICAL LOVE TOUR』でやった人生の曲に関して

 電気グルーヴ「TROPICAL LOVE TOUR」ファイナル、            3/25Zepp Tokyoを観ました、という短いブログをRO69に書きました。

  こちら。

ro69.jp

  で。この中で、アンコールで人生(ZIN-SAY!)の曲、「半分カメレオン人間」をやった、と書いたところ、「曲名が間違っている」「正しくは『恐怖カメレオン人間』だ」「さすが兵庫、呼吸をするように間違える」みたいな内容の、指摘のツイートをいただいた。

  僕もうろ憶えだったのだが、「あれ? こんな曲名だったっけ?」と気になって、念のため検索してみたところ、元は『恐怖カメレオン人間』だったことがわかった。

  でも、レーベルからもらったセットリストには、「半分カメレオン人間」と書いてある。

 

  ってことは、今「スコーピオン」がライブでプレイされる時は、『THE LAST SUPPER』収録の「スコーピオン2001」になる、というのと同じようなもんで、一部改題したのかな、と。

  しかも「人間」に「半分」を付けて「半分人間」って、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのアルバムの邦題なので、そこにかけたんだろうな、と。

 

  というふうに、わりとすんなり素直に納得したのでそのまま書いたのですが、実際どうだったかのかは知りません。一部改題したのか、ただの記憶ミスなのか。

  で、スタッフに確認しようにも、人生当時からついているスタッフなどいないし、ご本人たちに言おうもんなら「どうでもいい」ってまたうっとうしがられるて終わること必至なので、そのままにしとくしかないんだけど、どっちだったんだろう。というのは、ちょっと、気になります。

  明日以降、各音楽ウェブサイトにレポとかがアップされると思うので(僕はどこにも書く予定ないですが)、それにどっちの曲名が書かれているか、見て確かめたいと思います。

 

  で。話がちょっとずれるが、僕は現在、人生の音源は、アナログの『顔として…』しか所持していない。

「LP付きソノシート」として発売された、つまり本体はソノシートでLPはおまけ、そのソノシートの曲「さよならライダーZS 仮面ライダーZS三部作完結編」の方には「宝島見た? あっちゃん」という声と屁の音しか入っていない、あれです。

  キャプテンレコードから出た『バーバパパ』は、のちにCD化されたのを買ったのだが、誰かに貸したら返ってこなくて行方不明に。

  で、人生解散後で電気が人気が出始めていた頃=1992年にリリースされた『SUBSTANCE Ⅲ』という、シングルや未発表曲が大量に収録された編集盤、30曲ぐらい入っていてお得だったのだが(「恐怖カメレオン人間」も入っているし)、これも借りパクされてしまった。

  ただし、こっちは、誰に貸したかを憶えている。

  確か、僕の記憶では、山崎洋一郎に貸したのだ。

  電気のインタビューの前に、参考資料として聴きたいから貸してくれ、みたいな話で、上司だし仕事だしで当然貸したわけだが、そのまま返してもらえずに、軽く20年以上が経過。

  心底返してほしいが、先方はまず間違いなく借りたことすら忘れているだろうし。とか思いながらamazon.co.jpで探したら、『SUBSTANCE Ⅲ』も『バーバパパ』も、さして高くない値段で出ていたので、今買ったところです。

   こんな夜中に俺は何をやってるんだろう。と、自分でも思います。

めしの問題

  お昼時、会社の休憩室に弁当を食べに行ったら、入社1年目くらいの若い女子が、ふたりで食事していた。

  そのうちのひとりが、千切りキャベツの入ったビニール袋にドレッシングをダバダバと流し入れ、ガシャガシャ振ってから、その袋に箸をつっこんで食べ始めた。

  うわ! なんだその食い方! ロッテリアとかのシャカシャカポテトか!

  と、びっくりしたが、もうひとりの子が「あーそれあたしもやるー」と言ったので、さらにびっくりした。

 「ね。ワイルドだよね」

  って。それ、「キャベツの千切りの袋にドレッシングかけて振り回して、直で食ってやったぜぇー。ワイルドだろぉー?」ってほんとにスギちゃんが言いそうじゃないか。

 

  というのは僕ではなく知人の体験だが、これ、たぶん、世代とかの問題じゃないと思う。

 で、こういうのの、どこまでがセーフでどこからがアウトなのか、どこまでが行儀よくてどこからが行儀悪いのかみたいな境界線って、人によって全然違って、本当に難しいとも思う。

  なので、ちょっとこの件について考えてみたくなった。

 

  たとえば「シャカシャカポテトはセーフなのになんで千切りキャベツはアウトなのか?」と言われると、僕はまったく反論できない。

  それに僕も、インスタントラーメンを丼に移すのが面倒で鍋から直で食ったりする奴なので(人前ではやらないとしても)、その行為と千切りキャベツガシャガシャは「器に移さず直で食う」ということにおいて同じではないか、と問題提起されたら、「そうです」と認めるしかない。

 

  ちょっと話を広げる。昔、景山民夫の小説(確か『トラブル・バスター』シリーズのどれかだと思う)に、無神経な奴を表す形容として「カレーを食い終わって席を立つ時、残したライスにタバコの吸い殻を突き刺していくような奴」という一文があった。

  とても共感したので読んでから30年くらい経つ今でも憶えているわけだが、これも「何がいけないの?」という人は多いだろう。残ったライスはゴミと同じでしょ? あんた燃えるゴミを出す時に生ゴミと吸い殻をいちいち別の袋に分ける? と言われたら、そんなことはしないわけだし。

 

  この手のことを考えると、いつも思い出すのが、自分の家のことだ。

  実家の食事のしかたが、「みんな揃って食卓を囲む」ではなかったのだ。夕飯ができたら、そこにいる奴がなんとなく食う。朝も同じで、起きる時間や出かける時間によってバラバラ。

  大人になって、何年間かのひとり暮らしを経て、人と一緒にごはんを食べる生活があたりまえになってからすっかり忘れていたのだが、あるきっかけで思い出した。

  20代の中盤ぐらいから、東南アジアの島が好きになって、休みのたびにタイだのセブだのに行くようになって、特にセブは知人が住んでいるので何度も足を運んでいるのだが、あちらの島の村の人たちって、基本、家族揃って食わないのです。

  富裕層がどうなのかは知らないが、あんまり豊かじゃない人たちはみんなそう。主食はトウモロコシの粉を炊いたマイスというもので、それを片手に持って海に入っていって、小魚とか貝とかつかまえて、そのまま海にしゃがんで食っている。家にマイスが炊いてあって、腹がへった奴はおのおのそうしている、ということなのだろう。

  子供が8人とか10人とかいるから揃って食うのが物理的に無理とかいう以前に、そもそも「一緒にメシを食う」という発想自体がない。各自腹がへったらなんか食べて空腹を止める、みたいな感じなのかもしれない。

 

  そのことを知った時に、「あ! うちもそうだった!」と思い出したのだった。

  友達の家とかも、けっこうそういう感じだった気がする。僕の育った1970年代~1980年代の広島ではそれが普通だったのか、うちの近所だけだったのか、社会的なランクのどのへんに位置するかで分かれるのか、たまたまうちの親がそういう人たちだったのか、などに関しては、わからないが。

  トータス松本に2万字インタビューをした時に、彼の家は家族全員揃わないと絶対に夕飯が始まらなかったという話をきいて、「ちゃんとした家庭で育ったんだなあ」と思ったものでした。

 

  どこに着地すればよいのかわからないことを書いてしまった。

  そういえば僕の父親は、晩酌の時に、まずピーナツとかアラレとかの乾き物をつまみにして酒を飲む。目の前に料理があってもそうする。で、後半におかずとめしを食ってシメる。

  それを日常的に見ていたので、子供の頃はなんとも思わなかった。大人になり、自分も酒を飲むようになってから、ようやく「なんちゅうひどい飲み方なんだ」ということがわかった。目の前の料理の立場と、それを作った人の立場!

  と、2月12日のフラワーカンパニーズ vs The Birthday @ 広島クラブクアトロを観がてら帰省した時も、思いました。