兵庫慎司のブログ

音楽などのライター、兵庫慎司のブログです。

7/30・31『ABEDON50祭』のニュース原稿

  7月30日(土)・31日(日)山形市総合スポーツセンターにて行われた、ユニコーン恒例・メンバーが50歳になるとその人出ずっぱりでイベントをやる企画、そのオーラスを飾るABEDON編。その模様を、所属レコード会社が各ウェブ媒体等に一斉発信するニュース原稿として書く仕事をいただき、山形に行って、書いてきました。

  で、BARKS等あちこちで取り上げていただいてからもうずいぶん経つのでそろそろいいかな、ということで、こちらにもアップしておきます。

未読の方、よろしければぜひ。

  あ、BARKSの方には写真も多数アップされています。

  こちらです。

www.barks.jp

  じゃあこのBARKS読んでいただけばそれでいいじゃねえかって話ですが、保存しておく意味でも、以下、一応貼っておきます。

  出演者もセットリストも2日ともまったく同じ、でも2日それぞれレポを書いてほしい、と現場で言われた時は、「ええっ!? どうしよう」と思いましたが、自分としては、同じ内容であってもなんとか違うふうに書けるもんなんだな、と、書き終わってから 思ったのですが。

  いかがでしょうか。大丈夫でしょうか、これ。

 

 

1日目:7月30日(土)のレポ

 

  7月30日(土)山形市総合スポーツセンターにて、ユニコーンのライブイベント『ABEDON 50祭 サクランボー/祝いのアベドン』が開催された。このイベントは同所で2日間行われるもので、30日はその1日目。ユニコーンのメンバーが50歳の誕生日を迎えるごとに開催されてきたイベント・シリーズで、メンバー内で最年少であるABEDONの地元・山形で行われた今回でしめくくりとなる。

  ABEX GO GO、ABEDON and THE RINGSIDE、氣志團ユニコーンの4アクトが出演。チケットは即日完売、全国23ヵ所の映画館で生中継でライブ・ビューイングが行われ、大勢のファンが集まった。

 

  トップのABEX GO GO は、ABEDONがユニコーン解散後にSPARKS GO GOの3人と結成したバンドで、現在ではこうしたイベントの時など、数年に一度のペースでライブを行っているレアな存在。デビューシングルである「おせわになりました」など5曲を演奏、ファンは歓声で応えた。

   二番手のABEDON and THE RINGSIDEは、ABEDONと奥田民生SPARKS GO GOの八熊慎一、斎藤有太、木内健のいつもの盟友からなるバンドで、6月3日にソロアルバム『Feel Cyber』をリリースし、全国ツアーを行ったばかり。アルバムのタイトル曲「Feel Cyber」やABEDONソロの名曲「欲望」など5曲をプレイした。ABEDON and THE RINGSIDEとして山形でライブを行ったのは、このイベントが初となる。

  三番目の氣志團は、デビューアルバムからサードアルバムまでのバンド・プロデュースをABEDONが手がけてブレイクへ導いた、いわば愛弟子的な存在。このステージでは、往年の人気番組を模した『アベストテン』という企画を行った。

  綾小路翔は名司会者に扮し、氣志團のメンバーはバックバンドとなって、10位から1位までの曲を紹介していく。ユニコーン/ソロ/ABEX GO GOでABEDONが書いた曲から10曲を選び、それぞれを日本の有名ヒット曲風にアレンジ、ユニコーンのメンバーをはじめとする出演者たちがそのコスプレで入れ替わり立ち替わり登場して歌う、という内容で、超満員の会場は終始爆笑の渦に包まれた。

  綾小路翔は10曲中1曲でメインボーカルをとったが、氣志團の曲は1曲も歌わないままステージを下りた。

 

  トリのユニコーンは、前半でそれぞれのメンバーの50歳イベントの時に発表してきた曲を1曲ずつ披露。この『ABEDON 50祭』のために書き下ろされた新曲「RAMBO N°5」もライブ初公開。途中MCでは、奥田民生から「ABEDON! おめでとう! 氣志團もありがとう! 自分たちの曲を一曲もやらずに終わったけど(笑)」と会場の笑いを誘う。

  後半は「ひまわり」「WAO!」など、ユニコーン再始動後にABEDONが書いてきた曲が並ぶメニューで、本編のラストでは、TBS系ドラマ『重版出来』の主題歌になった「エコー」、そして「RAMBO N°5」と共にこのイベントに書き下ろされた「50/50」の2曲も、初めてライブで披露された。

  アンコールの「人生は上々だ」でABEDONは、90年代のユニコーンのアンコールの定番だったプレスリー風の衣裳に身を包んで客席のアリーナ後方から登場。フロアを縦断してもみくちゃになりながらステージにたどり着き、熱唱する。

  客席との掛け合いを延々と続けている途中、サプライズでバースデイ・ケーキがステージに。出演者と観客、全員で「ハッピーバースデー」を歌い、ABEDONがロウソクを吹き消し、盛大に50歳を祝った。最後にABEDONは「サンキュー山形! 俺の生まれたところ!」と絶叫、皆に感謝の意を伝えた。

  このイベントは翌日7月31日(日)にも、同じ出演者で行われる。

 

 

 

2日目:7月31日(日)のレポ

 

  7月31日(日)、ユニコーンABEDONの生誕50周年を祝うライブイベント『ABEDON 50祭 サクランボー/祝いのアベドン』2デイズの2日目が、彼の地元・山形市総合スポーツセンターにて行われた。ユニコーンはメンバーが50歳を迎えるたびに、それを祝うという体で、本人が出ずっぱりでパフォーマンスし続けるイベントを行っており、今回がそのしめくくりとなる。

  ABEDONとSPARKS GO GOのメンバーからなるバンドであるABEX GO GO、ソロ活動の仲間であるバンドABEDON and THE RINGSIDE、氣志團、そしてユニコーンの4アクトが出演。チケットは即日完売。全国23ヵ所の映画館で生中継のライブ・ビューイングも行われたため、1日目も2日目も本番中にメンバーが「押すとヤバい、生中継が途中で終わる」などと気をもんだりする一幕もあったが、無事両日とも最後まで中継された。

 

  トップはABEX GO GO 。ABEDONがピアノ弾き語りで歌い始め、八熊慎一(Vo&Ba)がそこにハモリをつけていく「夕立ち」でスタート。ABEDONと八熊慎一のツインボーカルが活きる骨太なロックンロール全5曲でファンを魅了した。

  途中のMCでABEDONは、「ちょうど10年前に山形でやりまして、また10年後の今日、ここでやりました」と発言。2006年に40歳を迎えたのを記念して、横浜・大阪・山形でイベントを行い、出演した奥田民生川西幸一と共に行ったセッションの感触がとてもよかったことが、ABEDONがユニコーンの再結成を考え始めるきっかけになったことを知るファンたちの間に、感慨深い空気が流れる。

  二番手のABEDON and THE RINGSIDEは、モハメド・アリからアントニオ猪木に受け継がれた入場テーマ「炎のファイター」に「アベドンバイエ!」と歌をのせたSEが響く中、メンバーの奥田民生SPARKS GO GO八熊慎一、斎藤有太、木内健がまず登場。続いてガウンに身を包みチャンピオンベルトを巻いたABEDONがオンステージ。

  6月3日にリリースされたばかりのソロアルバム『Feel Cyber』のタイトル・チューンでスタート、八熊慎一がダンボールを叩く「欲望」のアコースティック・バージョン以外の4曲は、すべて『Feel Cyber』からプレイ。ラストの「不思議は不思議」ではイントロで大きなハンドクラップが起き、サビではオーディエンスの腕が大きく左右に振られた。

  デビューアルバムからサードアルバムまでのプロデュースをABEDONが手がけた氣志團が、三番目のアクト。「音楽すべての師匠」「返しても返しきれない恩があります」などと、メンバーがABEDONを語る映像に続いて始まったのは『アベストテン』という企画だった。

  氣志團メンバーがバックバンドを務め、綾小路 翔は名司会者に扮して、10位から1位までの曲を紹介していく。ユニコーン/ソロ/ABEX GO GOでABEDONが書いた曲から選曲、それぞれを日本の有名ヒット曲風にアレンジ、ユニコーンのメンバーをはじめとする出演者たちがそのコスプレで登場して歌う、というもの。

  1日目も同じ内容だったが、前日に失敗した箇所が今日は成功した者あり、逆に前日はうまくいったのに今日はミスった者あり、前日言わなかったアドリブをぶちかまして大ウケするものありで、場内は終始爆笑に包まれた。

 

  トリのユニコーンは、前半でそれぞれのメンバーの50歳イベントの時に発表してきた曲を1曲ずつ披露するという、全員の『50祭』を総括するメニュー。この『ABEDON 50祭』のために書き下ろされた新曲「RAMBO N°5」も1曲目でライブ初公開、全員ミュージックビデオそのままの扮装で歌い踊る。

  後半は「ひまわり」や「WAO!」など、ユニコーン再始動後にABEDONが生み出してきた曲たちが並ぶセットリストで、本編ラストでは、TBS系ドラマ『重版出来』の主題歌「エコー」と「RAMBO N°5」と共にこのイベントのために書き下ろされた「50/50」の2曲を、初めてライブで披露。「50/50」の「君と僕はそう ふたつでひとつ そして僕たちは いつつでひとつ 新しい今を うたおう」というリリックが感動的に響きわたった。

  アンコールの「人生は上々だ」でABEDONはプレスリー風の衣裳に身を包んで1F客席後方から現れるという、山形ではおなじみの登場。前日は右後方からだったがこの日は左後方から客席をつっきってフロア後方のお立ち台まで到達、「しーあわせ! しーあわせ!」とコールを求めながら、山形の花笠に入った「幸せ」(紙吹雪)を盛大に撒く。

  そして「幸せ」を撒きながらステージまでたどり着く。ほぼ曲を歌いきり、最後のブレイクのところで客席に「おまえたちのしゃべりを聞かせてくれ!」と「脱げ!」コールを求め、それに応えてプレスリーの衣裳を脱ぐとその下にはブルース・リーの黄色いジャンプスーツが。ヌンチャクを振り回し、手島のマイクスタンドに付いたピックを飛ばしたり、メンバーにモミアゲを貼って回ったり、今日が最後だというピンスポット担当の照明スタッフに50歳記念の超特大ABEPELLI(ABEDON人形)をプレゼント(前日は7列30番の席のお客さんにプレゼント)するなど、自由の限りを尽くす。

  そしてそのまま曲に戻ろうとするも、奥田民生にストップをかけられる。「昨日の今日だから、きみにも何かあるよ」。前日はサプライズでバースデーケーキのプレゼントがあったが、この日は愛弟子=氣志團から、シャンパンタワーならぬABEDONビール(地元の月山ビールとコラボして作られた)タワーが贈られる。綾小路 翔に無理やり勧められ、「ランランルー」のコールに答え、3杯のビールを飲みしてからようやく曲を再開、エンディングまで走り抜けた。

  ABEDONが去ったあと、メンバー4人はステージを数度横断しながらオーディエンスに手を振り、感謝の意を伝えた。

 

  この日の模様は9月30日(金)21:00から、フジテレビNEXTライブ・プレミアム/フジテレビNEXTsmartにてオンエアされる。

  ユニコーンは8月10日に約2年5ヵ月ぶりとなるニューアルバム『ゅ 13-14』をリリース、9月3日(土)東京・府中の森芸術劇場どりーむホールから、追加公演含め全34本の全国ツアー「ユニコーンツアー2016 『第三パラダイス』」が始まる。

スピッツとユニコーンと石野卓球のニューアルバム、そしてサニーデイ・サービス『DANCE TO YOU』について

  先々週スピッツ、先週石野卓球サニーデイ・サービス、今週はユニコーン、と、うれしいニューアルバムだらけでリピートして聴くのが忙しい、中年邦楽ロックファンあるある。

 

  と、8月9日にツイートした。スピッツ『醒めない』が7/27、石野卓球『LUNATIQUE』とサニーデイ・サービス『DANCE TO YOU』が8/3、そしてユニコーン『ゅ 13-14』が8/10、と、すばらしいアルバムがどんどん出たことについて、そう書いたのだった。

 

  で。スピッツは、エンタメステーションにアルバム・レビューを書いた。

entertainmentstation.jp

   ユニコーンは、週刊SPA! とRO69とリアルサウンドにアルバムレビューを書いたし、CREAタワーレコードのフリーペーパー、DI:GA、DI:GA onlineでインタビューをした。

ro69.jp

realsound.jp

digaonline.jp

 

  石野卓球は、レビューとかは書いていないが、日刊SPA! でインタビューをした。

 

nikkan-spa.jp

  内容が内容なだけに、いわゆる「めちゃくちゃバズった」みたいなことになったようです。

  SPA! 編集部の担当から、お礼のメールが来ました。

  「編集長からも『ぜひ今後もこういったインタビューをお願いします』と、ことづてを受け取りました」

  だそうです。

  すみません、これをしょっちゅうやるのは無理です、あらゆる意味で。

 

  で。サニーデイ・サービスに関しては、ROCKIN’ON JAPAN10月号で曽我部恵一にインタビューしたんだけど、それ以外では、特に書いていなかったのだった。

  ということに、今気づいた。

  あ、JAPANのその号の告知、こちらです。

www.rockinon.co.jp

  このインタビュー、曽我部、かなり踏み込んだ話をしてくれています。

  曰く、サニーデイなんてもう終わってると。もっと若くていいバンドいっぱい出てきてるんだから、みんなそういうのを聴けばいいじゃんと。懐メロとして存在していくならわかるけど、新しいアルバム作る意味なんてあるの? と。

  という、己に対する疑問に打ち勝つために、長い時間かけて、さんざん曲を作ってはボツにして、レコーディング予算的にも破綻しながら作り上げた、と、そういう話です。

 そのためだけに、じゃないだろうけど、そういう要素もあったんじゃないかと思う、と。

  ぜひ読んでいただけるとうれしいです。

 

  で、それはそれとして、このサニーデイ・サービスの『DANCE TO YOU』がどういうアルバムなのか、僕なりにも、ちょっとここに書いておきたいと。

 

  これは、曽我部恵一が、様子のおかしい若者に戻ったアルバムです。

 

  曽我部恵一BANDでツアーしまくっている頃、確かシングル「魔法のバスに乗って」とアルバム『キラキラ!』の時だったと思うが、曽我部にインタビューしたら、今の自分がやっているのは、いち生活者としての音楽だ、と言っていた。

  こうして東京で生活していて、働いていて、家族を養って生きている、その毎日から出てきたものであると。

  ワークソングだったり、ライフタイム・ソングだったりする、ということですね。で、ヒップホップからの影響等もあるし、具体性のあることを歌いたい、直接生活や人生に響く言葉を歌いたい、と。

  だから、かつてサニーデイ・サービスでやっていたのは、もっと青春的で、抽象的で、叙情的なものであった、と言ってはいなかったが、まあそういうことになるのだと思う。

  なお、今調べたら、『キラキラ!』は2008年の春リリースで、サニーデイが再結成したのはその年の夏、RISING SUN ROCK FESTIVALで、だった。

 

  で。そのようなソカバンの、あるいはソロのカウンター的な表現として、思春期的で、抽象的で、叙情的な音楽を、サニーデイ・サービスで……ちょっとこのあたり言い方が雑だけどかんべんしてください。とにかく、サニーデイをそういうものとして始動させていたのか、というと、一概にそうは言えないと思う。

 『本日は晴天なり』と『Sunny』の2枚は、そういうところもあったけど、そうじゃないところもあった。

 そして、この『DANCE TO YOU』で、本当にそういうものになった、という。カウンターとかいうよりも、本当にそういう人に戻った、というか。

 

  試しに、『本日は晴天なり』『Sunny』と『DANCE TO YOU』を続けて聴いてみると、よくわかる。びっくりする、音の質感から何から何までが違って。

  『DANCE TO YOU』は、最初にいっぺん完成させたアルバムをボツにしたところでレコーディングの予算がなくなって、曽我部がリハスタ個人練習パソコン持ち込みレコーディング(つまりそのへんの中高生以下みたいな状態)で作り上げたアルバムなので、音質や音の触感が違うわけだが、でも、歌っていること自体、描いているもの自体も、大きく違うと思う。

 

  「これは、曽我部恵一が、様子のおかしい若者に戻ったアルバムです」とさっき書いたが、曽我部さん、44歳なわけで、3児の父でもあるわけで、有限会社スタジオ・ローズの社長でもあるわけで、「若者に戻る」といっても、頭ん中が戻っただけで、立場としては、戻れない。

  という状態って、いち生活者として、はたしてどうなのかと考えると心配にならなくもないが、ただ、そんなようなことによって『DANCE TO YOU』がすごい吸引力を持つアルバムになっているのは事実だと思う。

  そうだ。曽我部ってヤバい奴なんだった、ということを思い出した。

  いや、長い付き合いの中で、彼に失礼なことをされたり、イヤな思いをさせられたりしたことは、僕は一度もない。そういうヤバい奴じゃなくて、表現者としてヤバい奴、ということです。

 

  あと、俺も人の心配していられるような状態じゃねえ。というのもあります。

  だから、よりいっそうこのアルバムが刺さるのかもしれません。