読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

兵庫慎司のブログ

音楽などのライター、兵庫慎司のブログです。

2015年8月25日(火)、『サンフジンズ全国オペ "過注射”』広島クラブクアトロを観ました

 今年このバンドのライヴを観るのは、5月12日広島文化学園HBGホール『もみじまんごじゅう』(ライブレポはこちら http://shinjihyogo.hateblo.jp/entry/2015/05/13/121039)と、このツアー『過注射』の1本目の7月16日川崎クラブチッタ(ライブレポはこちら http://ro69.jp/live/detail/127748)以来、つまり3回目だったのだが、1回目と2回目以上に、2回目と3回目の「よくなりっぷり」の方が、すさまじいものがあった。

ファーストアルバム『スリーシンフサンズ』を聴いた方ならご存知だと思うが、このバンドの持ち曲、全部で13曲しかない。2013年5月4日、『JAPAN JAM』での初ステージの時は、カイ・ギョーイとジューイ・ラモーンそれぞれの持ち曲をやったりもしていたが、今はそれもなし。にもかかわらず2回のアンコールを含めて全17曲、2時間ぴったり。

 

・アルバム未収録の新曲"過注射”が1曲あって、それを披露する。

・同じ曲を2回やる(ただしやりかたを変える)。

・同じ曲を3回やる(ただし曲タイトルを変える)。

・「さっさとやるとすぐ終わっちゃうからね」とか言いつつ、MCを長めにとったりする。

・初日のチッタでジューイ・ラモーンが提唱し、その後Youtubeにアップしてオーディエンスに奨励した“ハリがないと”の後半における振付(カンチョーダンス、という呼び方でよいでしょうか?)を、「やっている人が少ない!」と怒って懇切丁寧に踊り方を説明し、その部分だけ演奏して踊らせてはダメ出しだし、またその部分だけ演奏しては……ということを、くり返す。

 

などによって、その尺まで到達している。持ち曲の少なさを逆手にとって武器にしている、と言ってもいい。初日のチッタの時は、頭30分演奏し終わったところでカイ・ギョーイがひとこと「もう半分だ」ともらし、客席から「えーっ!?」と悲鳴が上がったものが(でも結局1時間48分やったが)、その問題はクリアしている。

ただ、持ち曲が少ないのにちゃんと2時間やっているからすばらしい、と言っているわけではない。あたりまえだが。このバンドの、シンプルの極みのようなロックンロールは、生で観て聴くと本当に豊かで、さまざまな発見に満ちている、それがライヴの回数を重ねるごとに、よりいっそうクリアにわかるようになってきているのがすばらしい、という話だ。

同じ曲でも、演奏のたびに違ったものになること。もしくは、同じような曲でも、演奏する人・歌う人によって、まったく違ったものになること。3人ともこのバンドでは、普段は歌わないであろう歌詞を歌ったり、普段はしないであろうタイプの楽器の演奏のしかたにもトライすることになる、それがとても新鮮な魅力に満ちているということ。単に、めちゃめちゃすぐれたミュージシャンが3人集まって演奏するとどのようなことになるのかがよくわかること。そして、シンプルなロックンロールってこんなにいいものなんだ、という事実を、改めて思い知らされること。楽器を弾くということの楽しさや喜びそのものが、ステージから放たれていること。などなど。

それから、「ボーカリストが、あるいはギタリストが弾くベース」というスタイルのベースが、あきらかに存在することも、このバンドを観ているとわかったりする。Theピーズのはるのプレイを観るたびに「歌う人の弾くベースだなあ」と思うことが僕は多いのだが、それに近い感じかもしれない。はるさん、ピーズ以前は某バンドでギター弾いていたこともあるそうだし。

 

あとひとつ。このツアーが終わって以降の活動は未定なのだろうが、サンフジンズというバンドには、これまでそれぞれが行ってきた課外活動と異なる点がひとつある。全員が本業と同時進行でやっている、ということだ。カイ・ギョーイはABEDON+OT FROM ユニコーンやソロで、ジューイ・ラモーンはくるりで、各地のフェスやイベントに出演しながらこのツアーをやっている。ケン・シューイはそもそもバンドを複数やっている上に、人のバックやレコーディング等でひっぱりだこ。つまり、サンフジンズをやるからといって、ほかの活動を止めたり休んだりする必要がない、それでもやれるバンドであるということになる。というわけなので、今後の活動も楽しみにしています。

まあ、その分、スケジュール調整はすごく大変だろうけど。アルバムリリース時のプロモーションが、ラジオへのコメント出しと公式サイトにアップされたインタビューくらいしかなかったのも「3人を揃えるのが不可能」「でも誰かひとりに取材しても意味がないバンド」という理由だったのだと思う。僕はこの広島、ROCKIN’ON JAPAN11月号掲載(9月30日発売)のインタビューのために行ったのだが、逆に「ツアーのある日は3人が揃うから、リハ前とかに取材できますよ」ということで、実現したようだったし。