兵庫慎司のブログ

音楽などのライター、兵庫慎司のブログです。

ユニコーン『服部』の本が出ました

  「ユニコーン『服部』ザ・インサイド・ストーリー」という本が、11月21日にリットーミュージックから、発売になりました。

  ABEDON、EBI、川西幸一手島いさむ奥田民生、当時のマネージャー:原田さんと銀二郎さん、ディレクター:マイケルさん、プロデューサー:笹路正徳さんなどなど、『服部』に、もしくは『服部』の時期のユニコーンに関わった、メンバーとスタッフ総勢20名以上にインタビューをして、『服部』とはいったいなんだったのか、いかにとんでもない作品だったのか、そしてそのとんでもなさはどのようにして実現したものなのか、などを、解き明かしていく本です。おかげさまでとても順調に売れていて、評判もいいようです。ありがとうございます。

 

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ユニコーン『服部』ザ・インサイド・ストーリー リットーミュージック刊 1,800円+税

 

  この本、4年前にフラワーカンパニーズの本を作った時の編集者が、「やりません?」と、僕に振ってくれた仕事である。「『服部』から30周年ってことで、こういう本を考えついて、企画書を作って、今、SMAにオファーしてるんですよ。もし通ったら兵庫さん、どうですか?」と。

  ぜひやりたいです、と答えた。が、正直、まず通らないだろうなあ、と思った。

  なんで。めんどくさいじゃないですか。僕がじゃなくて、インタビューに答えなきゃいけない本人たちと、スタッフのみなさんが。

  だって30年も前の話だよ? 孫とか余裕でできる年月よ? 憶えてないでしょ、そんな昔のこと。メンバーにとってもスタッフにとっても『服部』は、きっと、とても特別なアルバムだろうとは思う。思うがしかし、そのあとメンバーは、ユニコーンでもそれ以外でも、何作も何作もアルバムを作ってきているわけで。スタッフだってそうだし……いや、スタッフはユニコーンの仕事だけしているわけじゃないから、なおさらそうか。

  この本を出したら間違いなく100万部売れて、SMAがとんでもなく儲かる、だからそれでも出す! というのならわかるが、まずそんなことは起きないし。申し訳ないですが。

 

  でも通った、企画。びっくりした。で、もっとびっくりしたのは、インタビューのオファーを出した総勢21人、誰にも断られなかったことだ。全員がOKしてくださった。感謝です、ありがとうございます、と言うほかありません。

  そして、インタビューして、さらにびっくりしたのは、メンバーも、スタッフも、「昔のことだしなあ」とか「憶えてないなあ」とか言いながら、話を訊いてみると憶えてるのね。もしくは、忘れていても、しゃべっているうちに思い出したりするのね。

  で、ご本人たち、お互いにとっても、たぶん意外な事実なんじゃないかなこれ、当時はそれぞれ知らなかったんじゃないかしら、みたいなことが、ポロポロ出てきたりするのだ。

 

  たとえば。ちょっと本文から引用すると、「君達は天使」の後半のテンポが上がるタイミングで、テッシーのギターが急にバカでかい音でギャーン!と入ってくるところ。テッシー曰く「あれ、録ってるほうは、なんでこういう音がするのかわかってないと思う。俺しかわからないはず」だそうです。

  というようなことが、演奏面でも、コンセプト面でも、ジャケットなんかのアートワーク面でも、メンバー間・スタッフ間のコミュニケーション面でも、プロモーション面でも、マネージメント面でも、ミュージック・ビデオ関係でも、ツアー関係でも、いろいろあるわけです。

  というのが、とにかく刺激的な仕事でした。

 

   メンバーも、「こういう記憶ものにいちばん強いのはテッシー」というのが5人共通の見解だが、意外と「川西さんだけ憶えていたこと」があったり、ABEDONの「ユニコーンに入るまで」も訊いたらあまりにもおもしろかったり(前にロッキング・オン・ジャパンで2万字インタビューやったから知ってたはずなのに、それでもおもしろかったのです)、というようなことが、いろいろありました。

 

  リットーミュージックのサイトはこちらです。ぜひ。

https://www.rittor-music.co.jp/product/detail/3119343001/

 

  あ、あとひとつ余談。

  この本、僕のクレジット、表紙は「取材・文 兵庫慎司」ってなっているんだけど、上のリットーのサイトだと「著者」という肩書になっている。それがどうも、何かこう、申し訳ないというか、「おい!」と言いたくなってしまう、自分に。

  リットー的に、サイトに「取材・文」って書くわけにはいかないし、著者が誰なのかはっきり記す必要があるんだろうから、そう書くしかしょうがないのはわかるんですが。

   でもねえ。だってこれ、ユニコーンの本じゃないですか。まあ、じゃあユニコーンが著者なのか、と言われると、そうクレジットできないのはわかるが。でも、しゃべってるの俺じゃないし。メンバーとスタッフだし。

  それをまとめて地の文を書いたのは私ですが、インタビュアーが著者を名乗っていいのは、たとえば吉田豪がプロレスラーにいっぱいインタビューしている本とか、田崎健太の佐山サトル長州力勝新太郎の本とか、そういうのならセーフだけど……という気がしてしまうのだった。

  何か、すみません。