兵庫慎司のブログ

音楽などのライター、兵庫慎司のブログです。

真心ブラザーズ 『KING OF ROCK 20th』/2015年5月1日(金)@リキッドルーム

昨日観たライヴのことを書く前に、前回のブログのお詫びと訂正です。

「確かダイノジをDJに誘ったのは『ROCK JP』というイベントだったと思う」「超満員でものすごくウケた」と書きましたが、私の記憶違いであったことが、ダイノジ大谷くんの以下のツイートで判明しました。

 

〉兵庫さんDJ話。正確には僕が誘われたのは保坂さんやはんさんと兵庫さんがやってたパーティー。実はすんごいウケなかった。 それで心配して客で来てた大地さんとミニコントして終わった。

 

というわけです。ごめんなさい、大谷くん。同じ下北沢Club Queですが、違うイベントでした。というか私、自分がこのイベントにも参加していたこと自体、忘れてました。

下北でお店をやっているはんさんという方と、ロッキング・オンの夏冬のフェスのDJブースのレジデントだった保坂壮彦くんと、100s/tae/フィッシュバスケットのギタリスト、小野眞一くんの3人がやっているイベントで、僕はレギュラーだったのか準レギュラーだったのか忘れたけど、とにかく誘われて途中で加わったのでした。

でもイベントの名前も、もう思い出せない……そうだ。思い出した。『アルコホリディ』というイベントだ。そうか、あれだったか、大谷くんに出てもらったの。でも「すんごいウケなかった」かなあ? お客さんが満員になって「すげえ、ダイノジ人気あるなあ」とびっくりした記憶は、たぶん間違ってないと思うんですが。いずれにせよ、失礼いたしました。

しかし、その「すんごいウケなかった」DJに活路を見出して、ラジオや舞台等の芸人としての仕事と並行して鬼のような本数のイベントを継続して行い、年末のCOUNTDOWN JAPANのASTRO ARENA(1万人ぐらい入る)を超満員にする現在に至っている、というのは、やはり、すごいことだと思います。

 

では本題。昨日の真心ブラザーズ『KING OF ROCK』20周年ライヴ@リキッドルームについてです。

 

4月25日(土)梅田クラブクアトロに続く2本目。セットリストは、『KING ROCK』を曲順どおり頭から最後までやって、アンコールで真心が『KING OF ROCK』期突入までの曲と突入直後の時期の曲をやり、2度目のアンコールを最新シングル“I’M SO GREAT!”でシメる、という全19曲でした。

というか、書いちゃえばいいか。

 

1 スピード

2 高い空

3 愛

4 マイ・バック・ページ

5 上手な眠り方

6 すぐやれ 今やれ

7 マイ・リズム

8 マイガール

9 忠告

10 今しかない 後がない

11 STONE

12 日曜日

13 スピード2

 

アンコール

1 スピード(桜井全力Ver.)

2 花のランランパワー

3 素晴らしきこの世界

4 月面

5 サマーヌード

 

アンコール2

I’M SO GREAT!

 

真心が、というかYO-KINGがそれまでの「若隠居モード」「20代で余生モード」(アルバム『善意の第三者』に顕著です)から脱して「いつか死ぬならその瞬間まではハイテンションで」モードに切り替わった曲が“花のランランパワー”と“素晴らしきこの世界”であり、それが『KING OF ROCK』につながったことはファン周知の事実だが、その2曲をちゃんとアンコールでやるあたり、正しいなあと唸りました。

当時の衣装(桜井曰く「NIKEのヤッケ」)に身を包んだYO-KINGは、たたずまいも表情もヴォーカリゼーションも、本当に95年当時のようだった(ジャンプの回数が少なかったのと、坊主頭でないことを除けば)。ゆえにどの曲も、「20年前のYO-KINGはこんなことを考えていました」という感じではなく、今現在のこととして響いてきた。つまり、リアルだった。2月21日の中野サンプラザの時は歌詞をとばしてしまった、“高い空”の「春まだ遠い 落合の片隅で」のところも、ちゃんと歌ってたし。

当時好きだったTLCの赤いTシャツを身につけて「ロック・シーン二大ナデ肩男のひとり」の本領を発揮しつつ(ちなみにもうひとりは浜野謙太)がんがんギターを弾く桜井秀俊も、まるで26歳の時のようにシャープでかっこよかった。かっこよかったのにナデ肩とか書かなくてよいと思います。すみません。

『KING OF ROCK』時期のライヴにはキーボードはいなかったが、今回は、秋の真心のライヴにも参加してた名ハモンドオルガン弾き、FULLSWINGの山口ゆきのり(なのに真心から「けいぶん」と呼ばれる男)が加わっている。ベースはさすがに福地伸幸(カステラ→コングラチレーションズ/エレファントラブ)ではなく、上野一郎。あの福地のバッキバキなベース・スタイルとは違うが、そもそも福地離脱後のライヴではずっとこの人が弾いてきたわけで、難なく弾きこなしておられました。

そしてドラム、ビバさんこと須貝直人。もともとすばらしいことこの上ないドラマーだが、ここまでパワー全開でばしばしドラムをしばき倒す姿、久々に観た気がする。勢いあまって1曲目の“スピード”の途中でフィルとちってたけど、11曲目“STONE”のブレイク時にスティックをすぱーんと後方に放り投げたそのさまが異常にかっこよかったので、よしとします。なんだ「よしとします」って。

 

とにかく、どの曲のプレイもすばらしかったし、どの曲も演奏と歌詞の細部まで自分がクリアに憶えていることに気づいてびっくりした。超満員のお客さんもみんなそうだったのではないか。と特に思ったのがアンコールの頭、YO-KINGがギターを弾き、桜井がハンドマイクでヴォーカルをとった “スピード”。YO-KING曰く「ふたりともうろ覚え」で、ギターが不安定なのはいいとしても、桜井の歌の危なっかしさに「桜井さん! 歌詞も歌い回しも俺のほうがちゃんと覚えてます!」と思った。で、フロアを見渡して「今ここにいる全員、俺と同じことを思ってるだろうなあ」と気づいた。そのような、妙な一体感がリキッドに充満していました、あの瞬間は。

 

たとえばくるりの『さよならストレンジャー』『図鑑』再現ライヴ(残念なことに僕は見逃してしまったのだが)は、くるり自体がどんどん音楽性を変化させていくバンドだから、そりゃやる意味あるよなあ、と納得した。でも、真心のこの『KING OF ROCK』20周年ライヴってどうなの? ただ「懐かしいなあ」っていうことで終わるんじゃないの? と懸念していたのだが、そんなことはありませんでした。

当然、真心も何度かの音楽的変化のターニングポイントを迎えて現在に至っているわけで、その中でも特に『KING OF ROCK』期のそれが大きかったわけで、それはいったいどういうものだったのか、どういう意味や必然があったのかが、あとになったほうがよくわかる。そしてそれを、今の真心が表現したほうが、さらによくわかる。ということもあるのだ、と証明するライヴだったのだ。

 

とか思ってたら、「ご好評につき」秋に続編、全国11ヵ所で『MORE KING OF ROCK 20th』ツアーをやるそうです。なんだあ。でも、そのツアーのリズム隊は、Low Down Roulettes(ベース岡部晴彦&ドラム伊藤大地)だそうです。

それは観たい。というか観ないわけにはいかない。