兵庫慎司のブログ

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写真集『横山健 岸田哲平編』について

横山健  岸田哲平編』

2015年3月27日刊行

3,700円+税   スペースシャワーネットワーク刊

 

ライブカメラマン岸田哲平が、1997年から2015年初頭までの18年間、横山健を追い続け、撮り続けた写真集。

とりあえず、ひとつの対象をそれだけの年月撮り続ける、ということ自体がそうそうないことだし(なのでBRAHMANを追い続ける三吉ツカサもすごいと思う)、そのモデルが横山健であるという事実にも、当然、高い価値があるが、それ以上に目を奪われること。

最初が1997年・ハイスタ時代の写真、最後がこの本刊行直前の2015年1月の写真、というふうに、時系列に作品が並べられているのだが、どの時代の、どの写真も、横山健の写真も、ほかの人も写っている写真も……あと、当然ライブ写真がその多くを占めているわけだが、それ以外のオフショットなども含めてすべて、「今この場に自分がいること」「今自分がこのライブを観ていること」「今自分がこの音を聴いていること」「今自分が写真を撮っていること」の興奮や喜びや混乱や感傷などなどの温度が、ページをめくってもめくっても、全然下がらないのだ。高い高いままなのだ、最後まで。

 

この本のあとがき、というか、あとがきの位置に掲載されている岸田哲平への手紙の中で、横山健もちょっと出している「初期衝動」という言葉で表される、何か。

日常の岸田哲平や、ほかの撮影仕事での岸田哲平においてどうなのかは知らないけど、横山健も岸田哲平も紆余曲折ありまくった18年の末に現在に至っているはずなのに、この写真集で、カメラをかまえて横山健のさまざまな時代のさまざまな瞬間を切り取っている岸田哲平の初期衝動は、最後まで変わらないままなのだ。

いや、実際はどうかは知らない。本当は変わっているのかもしれないが、僕にはそう見える、という話だ。

18年経っても同じ初期衝動。そんなことありえるか? ありえない、天才かバカのどっちかじゃないかぎり。ってことは、天才というにはちょっとなんかアレなので、まあ、バカなんだと思う。

ただ、こういう写真集はバカじゃないと撮れないし。利口なライブとかの写真、観たいか?と考えると、「いや、別に」って思うし。

まあ、この人にとって、これが天職なんだろうなあ。と、改めて思いました。

 

なお、なんで半年以上前に出た写真集について今さら書いているのかというと、これが出た時、私まだギリギリ会社員で、ブログとかの好きに書ける場を持っていなかったのと、昨夜部屋を整理していたら頼んでもいないサインを入れられたこの写真集が出てきて、もらった時に何度も観たのに、またなんとなく観直し始めて、終わって時計を見たら1時間以上経っていて、そうか、これはちょっとなんか書きたいなあ、と思ったからなのでした。

 

『写真集 横山健 岸田哲平編』、詳しくはこちらを。http://books.spaceshower.net/ken-yokoyama/