津村記久子の新刊が出ていたことを知らなかった
津村記久子が、『この世にたやすい仕事はない』(日本経済新聞出版社)で、第66回芸術選奨文部科学大臣賞新人賞[文学部門]を受賞したことが、3月9日に発表になった。
ということを知って、びっくりした。受賞がではなくて、その本が出ていたことを、自分が知らなかったことに、だ。
僕は津村記久子という作家は、単行本が出たら即買って、文庫になったら買い直す、そして両方持っておくくらいなので、まあそこそこ熱心なファンといってよいと思う。
昔、インタビューをさせてもらったのが縁で面識ができ、文庫の解説を書かせていただくという光栄にあずかったこともある(角川文庫の『ミュージック・ブレス・ユー!!』という小説。解説はともかく、ロックどっぷりな10代をすごした方には間違いなくぶっ刺さる、すばらしい作品です)。
なのに、受賞するまで、この『この世にたやすい仕事はない』が出ていたことを、知らなかったのだった。
あせって買いに行った。奥付を見た。4刷だった。1刷は2015年10月15日。げ、5ヵ月前じゃん! ネットでいろいろ見てみたら、刊行当時、いろんなウェブや雑誌などで書評が出ていたことも知った。
なのに、なんで自分が知らなかったのかの理由は、はっきりしている。単に、誰にもおすすめされなかったからだ。
たとえばこれが樋口毅宏だったら、僕は彼のツイッターをフォローしているので、本が出る前からうるさいくらい本人の告知が始まるので知ることができるが、津村記久子はツイッターとかブログとか公式サイトとか、一切やっていない。
たとえばこれが伊集院光の映像作品だったら、amazonがしつこいくらいお知らせしてくるので、うっかり2回予約して2枚届いちゃったりしたわけだが、僕はたまたま津村記久子の作品をamazonでは買ったことがなかったらしく、お知らせが来なかった。
たとえばcakesなんかの記事は、書籍のパブリシティを兼ねていることも多いので、それで知った本を買ったりすることもよくあるが、この作品はそういうルートでも、僕の目に届かなかったことになる。
出版社の書籍部のツイッターや、知人の編集者のツイッターなどもフォローしているので、そこから情報が入ってくることもあるが、このたびの本が、彼女としては初めての日本経済新聞出版社からの刊行だったこともあってか、そのルートで知ることもなかった。
というわけで、本が出たことを知らなかったわけです。
おまえがバカなだけだろ、と言われたらそのとおりなんだけど、これ、ほんとにヤバいと思った。
自分が必要なものも必要でないものもとにかくばんばんおすすめされまくる、という生活にすっかり慣れきってしまっていて、必要だけどおすすめされないものもあることを忘れていた、という己の怠惰さを、つきつけられた感じがしたのでした。
なお、『この世にたやすい仕事はない』、津村記久子の得意中の得意であるところの、仕事小説の到達点、と言っていいくらいおもしろかった。全5話からなる短編連作集なんだけど、読み終わるのがとてももったいなかったです。

- 作者: 津村 記久子
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/06/23
- メディア: 文庫
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