のんとテレキャスターの話
リアルサウンドのこの記事。のんが、10月29日に女子美術大学・相模原キャンパスの学祭に出演、自身のバンドとともにライブをやった、そのレポート。
http://realsound.jp/2017/10/post-123362.html
これを読んで、というか写真を見て、思い出した。
4年くらい前のことです。のんが……いや、当時は能年玲奈でしたが、とにかく、彼女が雑誌の撮影で弾くギターを、手配したことがある。
『あまちゃん』が終わった直後くらいの頃。僕が編集部にいた雑誌で、表紙巻頭でのんの特集をすることになった。
その特集には僕は関わっていなかったんだけど、編集部のスタッフ何人かが、撮影でギターを使いたいけどどこで借りればいいんだろうとか、どの形がいいんだろうとか相談しているのが、耳に入った。どうも、楽器まわりの知識がある人がいないっぽい。
要は、「日本のメーカーよりもフェンダーとかギブソンとかの方がいいだろうな」とか、「女の子だからストラトかテレキャスかSGかな、体格的にレスポールは重いから避けた方がいい」とか、あるじゃないですか。
そうか、そういうの、バンドとかやったことない人は知らないのか、と気がついて、大きなお世話だが「それ、俺が借りて来てあげる」と口をはさんだのだった。
で。知ってる楽器レンタル屋とかに借りてもいいけどギター1本だしな、弾きもしないのにギブソンとかフェンダーとかいっぱい持ってる知り合いいないかな、と考えた結果、フラワーカンパニーズの竹安堅一に電話をした。
「あのさあ、テレキャス持ってない?」
「持ってるけど」
「色は?」
「サンバースト」
「ちゃんとしたやつ?」
「うん。フェンダーUSAの1969年」
「おお、いいねえ。貸してくんない? 雑誌の撮影で使うんだわ」
「いいけど、誰を撮るの?」
「能年玲奈」
「えーーーーっ!!!!」
熱心に『あまちゃん』を観ていた竹安、大興奮。
当日、自分で撮影現場に持って来たい! と主張するのを「俺も現場には行かないんだからダメ」とはねのけ、そのギターを後輩のバンドマンに貸しっぱなしだというので翌日彼と会って引き取り、一件落着、と思ったら、そのまた翌日、竹安から電話が。
もう1本テレキャスを持っていたと。この間買ったフェンダー・メキシコの赤いテレキャスで、機材倉庫に置きっぱなしで忘れていたと。アキちゃん(『あまちゃん』での彼女の役名)、赤の方が気に入るかもしれないからそっちも貸す、と。
正直「いらねえよ」と思いました。
高校の時、バンドやってた子だぞ。プロフィールの好きなバンドのところにGO!GO!7188とつしまみれを書く子だぞ。そんな子、1969年のフェンダーUSAと最近買ったフェンダー・メキシコがあったら、USAを取るに決まってるじゃねえか。
でもあまりにも熱心なので、借りに行きました。待ち合わせて、お礼に酒おごって、ふたりともベロベロで帰りました。
撮影後にきいたところ、2本ギターを出された彼女は、迷いなくUSAを手に取ったそうです。
このリアルサウンドの写真の彼女、赤いテレキャス弾いてますよね。それを見て、この件を思い出したのでした。
そのフェンダー・メキシコは、こういう明るい赤じゃなくて、ワインレッドでしたが。
そういえば、1本目のギターを借りた時、竹安に「ギターにサインしてもらえない?」と言われた。
もちろん断りました。どこの世界に、自分のビンテージ・ギターに若い女優のサインをほしがるプロのギタリストがおるか、と。
「このギター、いくらしたの?」
「40万円ぐらいだったと思う」
彼女も引くわ、そんなギターにサインさせられたら。