兵庫慎司のブログ

音楽などのライター、兵庫慎司のブログです。

朝と夜を間違える

  TBSラジオ伊集院光とらじおと』、2019年1月22日火曜日の放送。月曜から木曜の8時30分から11時まで生放送されているこの番組、毎日10時からゲストが来るのだが、この日のゲストである歴史学者の呉座勇一が時間になってもスタジオに到着しない、というトラブルが発生した。で、結局現れず、前半はその前のコーナー『俺の五つ星』にレポーターで出ていたお侍ちゃん(という芸人)を呼び戻してそのコーナーの延長戦をやり、後半はこの次の番組『生活は踊る』のジェーン・スーが飛び入りして、ゲスト不在の時間を乗り切った。

  番組が始まって2年9ヵ月になるが、こんなことが起きたのは初めて。当事者のみなさんはさぞかし大変だったとお察しするが、「うわ、生放送ならではのトラブル! レア!」と、めっちゃワクワクしながら、楽しく聴きました。

  「呉座先生連絡取れまして、実にシンプルな連絡ミスが原因でした。楽しみにしていただいたリスナーの皆様すみませんでした! 近日ゲストにおむかえします」

  伊集院光は、放送終了後にそうツイートした(ってことは、放送中は連絡取れなかったのね)。そして翌日=1月23日水曜日の放送の冒頭で、改めて説明があったのだが、呉座先生、「朝10時」を「夜10時」と間違えていたのだという。「来週の火曜に改めてゲストでお迎えします」とのこと。

  びっくりした。ある? そんなこと。呉座先生、天然な方なのかもしれないが、だとしてもわかりそうなもんじゃん……いや、そうは言えないか。ラジオを聴く習慣がない人は、伊集院光が何時に番組をやってるとか知らないか。いやいや、でも、自分がゲストで出るってなったら「どんな番組なんだろう」って公式サイトを見てみるくらいのことはしない?……しない人もいるか。でもなあ。朝と夜、間違えるか?

 

  ……いや。間違える。そういう人もいる。昔あったわ、同じことが。

 

  松尾スズキの担当編集者が集まって彼の誕生日を祝う「松尾会」という催しを、毎年12月に行っている。確か2001年とかそれくらいに始まったから、もう17年か。参加するのは毎年20人強、ただし、現在も松尾さんの編集担当なのはそのうち3分の1くらいで、あとの3分の2はファンなので松尾さんのまわりをウロウロしていたい元担当。中には、会社をやめて、もう編集者じゃなくなっている奴もいる。私ですが。

  で、とにかく。その会が始まって、5回目か6回目の頃のこと。

  今年は趣向を変えたい、と松尾さんから希望があった。松尾さんの初代助手の齋藤小番頭が卒業したので、サプライズで彼の門出を祝いたい、と。

  夜、ホテルのスイートにカンヅメになって脚本を書いている松尾さんが、頼んでおいた資料を持って来てくれ、と彼を呼ぶ。何も知らずにやって来た彼を、全員なまはげの扮装をした我々松尾会が囲み、「職のない子はいねがー!」と叫びながら就職情報誌を投げつける。で、松尾さんのスピーチのあと、彼の労をねぎらう宴会に移る、というのが、松尾さんの発案だったのだが。

 

  当日は日曜だったので悠々と寝ていたら、朝9時すぎ、電話の音で起こされた。松尾さんの二代目助手からだった。

 「あの、私、みなさんに、夜9時ってお伝えしましたよね?」

 「……え? は? 何? そらそうでしょ?」

 「Wさんがもうホテルにいるんです。今、電話がかかってきて」

 

  そう、松尾会の古参編集者のWさん、なんでかわからないが朝9時だと思いこんで、ホテルに行っちゃったのだ。で、誰もいないしどの部屋に行けばいいかわからないしで、二代目助手に電話して、初めて夜9時だということを知ったという。

  いや、二代目助手が正確に「夜の9時ですよ」と言ったかどうかは、正直、俺も憶えてないよ? ないけど、だって朝の9時なわけないじゃん。現に彼以外は全員、夜の9時に集まったし。

  と、夜、顔を合わせてから彼に言ったのだが、なぜそう思い込んだのかはよくわからないままだった。今思い出した。朝9時じゃないことがわかったあと、彼はそのホテルの周辺で夜9時までの時間をつぶしたそうだ。それも謎だ。12時間じゃん。よくつぶせたなそんなに。なんでいっぺん帰るとかしないのか。

 

  書いていてもうひとつ思い出した。その「なまはげの扮装」というドレスコード、僕と後輩のロッキング・オン・チーム2名は、「こういう時こそ手抜きはいかん」と、本気のなまはげセット(鬼の面・藁でできたミノ・手に持つ斧など)を、ひとり2万円出してプロの衣装屋に借りたのだが(もちろん自腹です)、そんなガチなのは我々だけで、ほかの編集者たちは、節分の豆のおまけみたいな紙の鬼のお面だったりした。

  特にテレビブロスの担当は、「紙袋に鬼の顔を描いてかぶる」という、雑さの極みみたいな按配で、非常に腹が立ったのを憶えています。

  あと、スイートルームの絨毯の上に、我々のミノの藁がどんどん抜け落ちて、松尾さんが困っておられたのも、憶えています。

 

  あ、あともうひとつ。その「ゲスト呉座勇一来ない事件」の翌日の、1月23日水曜日の『伊集院光とらじおと』。その日のゲストの絵本作家のヨシタケシンスケは滞りなく来て出演をすませたが、翌日のゲスト、特技監督中野昭慶が、9時半頃に来ちゃったそうです。「明日ですよ」「あ、そう」と帰って行かれたそうです。ということが、番組終了間際に、伊集院光の口から明かされました。

  ちなみに今日、1月24日木曜日は、何事も起きませんでした。中野昭慶監督、普通に出演されました。