兵庫慎司のブログ

音楽などのライター、兵庫慎司のブログです。

教えてくれとは言ってない

  たとえば。「コードレス掃除機を買いにビックカメラに来ている」というツイートをした有名人が、「それならパナソニックの××がおすすめです」とか「ダイソンは高いから日立の△△がいいですよ」とかいうような、アドバイスのリプだらけ状態になっていることがある。「ウォーキングの時に履いているシューズは?」と尋ねられたので、それに答えたら、別の人から「××というブランドのシューズがいいですよ」というリプが飛んできて、「使ってるものを聞かれたので答えただけで、僕はアドバイス求めてないっす」と、返している人を見たこともある。

 

  すんごいわかる。そうなのだ。なぜそんなにアドバイスしたがるんだ、みんな。そのツイート主が、「コードレス掃除機ほしいんだけど、おすすめありますか?」とみなさんに問うているならわかる。でも、「買いに来ている」って言っただけでしょ。問われてもないのに教えるって何? そんなに教えたいの?

  というのも、すんごいわかる。そうなのだ。教えたいのだ。その人がちょっとでも自分の詳しいテリトリー(この場合だとコードレス掃除機とウォーキングシューズ)に入ってきたら。

  親切心ではないと思う。だって、別に困ってないもん、その相手。じゃあなんで教えたがるのか。教えられる、アドバイスできる、自分は彼の知らないことを知っている、自分の方が詳しい、だから自分の方が彼より上位に立てる、というマウンティング欲が満たされるからです。

  なんで言い切れるのか。自分がそうだからです、力いっぱい。音楽とか映画とか本、つまり自分の仕事に関わってくる範囲のものは、まだ大丈夫だが、それ以外がヤバい。

  ということに気がついたのは、よく行く飲み屋で知り合いになったタトゥーだらけの男に、「この界隈でタトゥーNGと謳っていない銭湯は、こことこことここ」という話を、滔々とまくしたててしまったことを、翌朝、思い出した時だった。

  彼は「サウナ好きなんだけど、この身体なもんで行けないんですよね」とか俺に言ったか? 言ってないよね。「兵庫さん、サウナ好きなんですよね」くらいのことは言ったかもしれないが、だとしてもそれはただの会話の糸口であって、俺のサウナ知識をほしがったわけじゃないよね?

  あああ。やってもうた。というか、そのように冷静になって振り返ると、「やってもうた」だらけじゃないか、俺の生活。以降、酒を飲んでいる時も飲んでいない時も、「訊かれない限り教えたがらないこと」を念頭に置いて、常に自分を信用しないようにしないようにと心がけながら、日々を送っています。

 

  SNSの普及でむき出しになったマウンティング欲と承認欲求って、つくづく厄介だなあ、SNSって本当に、人間の欲望のリミッターを外すツールなんだなあ。と、すんごい今さらだけど、よく思うのでした。

  というか、すんごい今さらであっても、常にそのことに意識的でいないと、いろいろ危険だなあ、と思うのでした。