いただくな、そんなに
と、いつも思っている。
ツイッター等で何かを宣伝している人とか、テレビにプロモーションで出ている人とか、特にそうだ。
「映画に出演させていただきます」
「番組に出させていただきます」
「ライブをやらせていただきます」
「本を出させていただきます」
「小説を書かせていただきました」
などなど。
「以前に旅番組に出させていただいて、ロケで北海道に行かせていただいた時に──」と、女優が「いただくダブり」でしゃべっている例も、テレビで目の当たりにしたことがある、そういえば。
偉そうに見えないように、自慢のニュアンスが入らないように、とにかくなるべくへりくだっておこう、叩かれないために。という理由でそうしているのはわかる。わかるが、いくらなんでも過剰だと思う、謙譲が。
たとえば、「ラーメンを食べさせていただく」とか「サウナに入らせていただく」とは、言いませんよね。だからつまり、「映画に出る」とか「本を出す」といったような、何かしらの晴れがましさを伴う行為を言葉にする時に、人はへりくだるものなのね。という世の中に、ネット普及以降、すっかりなってしまった、という話だ。
そんなにへりくだるの、おかしくない? あなた、べつに特別扱いしてもらって映画に出たわけじゃないんだから、普通に「映画に出ました」でよくない? それが乱暴だと感じるなら、「映画に出演しました」で充分じゃない? という。
でも、こういうのって易きに流れるのが世の常なので、現在のような「とりあえずへりくだっとけ大会」になってしまうのだった。
このままいくと、映画とかテレビとかだけじゃなくて、ちょっとでも人にうらやましがられるかもしれない可能性のあることがらは、すべてそうなってしまうかもしれない。
「ポルシェを買わせていただきました」とか。「スペイン旅行へ行かせていただきました」とか。「フルコースをいただかせていただきました」。いただかせていただく。もはや、何がなんだかわからない。
もう一斉にやめません?
あと、バンド名とか、お笑いのコンビ名とか、会社名とか、お店の名前とかに、なんでもかんでも「さん」を付けるのも、とてもイヤです。いつまで経っても「まあいいや」と思えない。
という意味で、「ヤバイTシャツ屋さん」というバンド名は、とてもすばらしいなあと思う。「さん」キラー。
とか言っていたら、「ヤバTさん」とか呼ぶ奴も現れるのだった。ああもう。