兵庫慎司のブログ

音楽などのライター、兵庫慎司のブログです。

サニーデイ・サービスのニュー・アルバム『いいね!』をずっと聴いている

  2020年3月18日に、突然「今夜配信スタート!」というツイートで、サニーデイ・サービスのニュー・アルバム『いいね!』のリリースが告知された。で、3月18日から19日に日付が変わったあたりで、配信が始まった。

  ドラマー大工原幹雄が正式加入して以降では初めてのフル・アルバムで、彼の加入を知らせた時のバンドのオフィシャル・ツイートには「4月にはニュー・アルバム、5月からは4年ぶりの全国ツアーが始まります」と書かれていた。なので、それを覆して前倒して発表した、ということになる。

  これ、関係者とかには、事前にお知らせあったのかな。少なくとも私は完全に寝耳に水でした。教えといてよ、前もって言ってくれたら自分で作品を選べる雑誌のレビューとかで紹介したのに、と、思わなくもないが、こんなふうに不意打ちで出すというのが、今のサニーデイらしいなあというか、素敵だなあとも思う。

 

  全部で9曲。1月1日にMVと共に公開された新曲「雨が降りそう」は入っていない。

  音楽ナタリーのニュース記事には「エレキギター、ベース、ドラムという最小限のバンドアンサンブルに立ち返って制作された『いいね!』は、1995年発表のデビューアルバム『若者たち』を彷彿させる作品に仕上がっている」と書いてあった。ナタリーって基本的に「書き手の主観入れちゃダメ」ってメディアだけど、誰がそう思ったのかな。プレス・リリースとかに書いてあったのかな。

  まあいずれにしろ、確かに『若者たち』に近いかも、と思うところもあったけど(6曲目「日傘をさして」のイントロの感じとか)、それよりも、2016年8月に出た『DANCE TO YOU』に続くアルバム、というふうに僕は感じた。

  あのあとに『Popcorn Ballads』と『the CITY』の2作のアルバムが出ているけど、それをすっとばして直結しているのがこの『いいね!』、というか。どちらも9曲入りだし、どちらもイラストがジャケットだし、音や言葉が出している気分とか思想が近い気もする。

 

   1曲目「心に雲を持つ少年」のイントロの、まるで曲の途中から再生したみたいな唐突な始まり方。2曲目「OH! ブルーベリー」と5曲目「エントロピー・ラブ」の、「今のサニーデイの必殺名曲パターン」とか形容したくなる素敵な鳴り(「苺畑でつかまえて」とかに通じるような)。4曲目「春の風」の混沌とした青春感。「コンビニのコーヒーはうまいようでなんとなくさみしい」という歌い出しから、詞がとても気になって耳をそばだててしまう7曲目「コンビニのコーヒー」。9曲目の「時間が止まって音楽が始まる」というタイトルの、「これぞ曽我部!」と言いたくなる見事さ──。

  などなど、耳をつかんで離さないポイントだらけ、心の奥深くまで入ってくるポイントだらけで、昨日からもうずーっと聴いている。何度も何度も聴いている。

  要はめちゃくちゃいい、すんごくすばらしいってことなんだけど、まだそのよさ、すばらしさを自分の中で整理整頓できていない。できていないけど、たとえできていなくても、何かすぐ書いておくべきではないか、こんなふうに突然発表された作品なんだから。

  という気持ちになってしまったので、とにかく今書けることを書きました。

  このあとも何度も聴きます、しばらくの間。いや、当分の間、になるだろうな。

 

  あ、曽我部もツイートで指摘してたけど、Spotifyだけ当初はアルバム名も曲名も、なぜか全部カタカナになっていた。「え、もしかしてバンドの意図?」と、ちょっと混乱しました。1日かからずに直りましたが。