兵庫慎司のブログ

音楽などのライター、兵庫慎司のブログです。

2022年12月3日(土)、電気グルーヴのライブに、サポートで砂原良徳が参加した

 2022年11月18日(金)福岡・20日(日)大阪・12月2・3日(金・土)東京、のZeppを回った電気グルーヴのツアー『Zeppツアー“みんなと未来とYシャツと大五郎”』の、東京公演=Zepp Haneda2デイズを観た。

 福岡と大阪はいつもの4人によるステージだったそうだが、11月26日(月)にagraph牛尾憲輔がコロナ陽性になり、その代打サポートとして、1日目はSUGIURUMNこと杉浦英治が、2日目はまりんこと砂原良徳が、出演した。

 石野卓球ピエール瀧のMCによると、まりん、アンコールでゲストで出るとかではなくて、全面的に電気グルーヴのライブに参加したのは、1997年のツアー『野球ディスコ』(アルバム『A』のツアー)以来なので、25年ぶり、とのこと。

 

 なお、脱退後に、まりんが電気のライブにゲスト出演したのは、まず、2008年4月1日のリキッドルームに、1曲目でいきなり「ママケーキ」を歌いながら登場した時。

 次は、2014年の電気グルーヴ結成25周年ツアー『塗糞祭』。CMJK、DJ TASAKA、スチャダラパー天久聖一──つまり電気の元メンバーや、元サポートや、元「電気グルーヴ×スチャダラパー」や、元イボピアスの人たちも、次々に登場した時(映像作品になっています)。

 そして、今年2022年7月19日(火)のリキッドルームに、アンコールで「ママケーキ」を歌いながら登場した時。

 以上です。ただ、これ、いずれも自分が観たから知っているやつなので、僕が知らないだけで、もっとあったのかもしれません。もしあったら、教えてください。

 

 それからもうひとつ。電気は『野球ディスコ』ツアー以降も、まりんが脱退するまでの間に、何本かライブをやっている。

 1997年12月24日中野サンプラザの、スペースシャワーTVのイベント(というか授賞式)「MVA」。1998年4月25日、当時はまだ新宿にあったリキッドルームでの「TACHNO FEST」にシークレット出演。その後、4月30日のドイツの『MAYDAY SAVE THE ROBOTS』を皮切りに、ヨーロッパ各地のフェスやイベントに6本出演している。

 1999年には、1月27日にフランスのイベント『PALM BEACH BEATS Ⅳ』(MIDEMのパーティー)で1本。これが、まりん在籍時の最後のライブになった。以上の情報は、電気グルーヴの20周年記念アルバム『20』のブックレットの年表より。

 つまり、厳密に言うと、まりんが電気のワンマンで、フル尺でライブに参加したのが、25年ぶりだった、というわけです。こんなに細かく調べ直すようなことでもないと思いますが、自分でも。

 

 ともあれ、まず初日のSUGIURUMN。SEが鳴り、緞帳が開いて、ステージ上の3人(ピエール瀧吉田聡石野卓球)はいつもどおりだが、agraphの位置に、キャップ&ロン毛&サングラスの男がいる。でも2曲目の「人間大統領」の間奏まで、1曲半もの間、メンバー紹介がない。あの間、SUGIURUMNはきつかっただろうなあ、という話を、アンコールのMCで卓球と瀧がする。

 で、そこで紹介されたあとも、agraphの病欠も含めてMCでちゃんと説明されたのは、7曲目の「モノノケダンス」が終わったところだった。つまり、1曲目の「Set you Free」から2曲目「人間大統領」の途中までは、オーディエンスみんな「誰?」状態で、2曲目の途中で紹介されてから7曲目が終わるまで、それが「なぜ?」に変わった状態のまんま。そりゃあつらいよね、と卓球。

 確かにSUGIURUMN、見てはっきりわかるほど緊張していた。卓球「その間、転校生でジロジロ見られる感じ?」

 SUGIURUMN、DJとして数え切れないほど石野卓球と共演してきた朋友であることは周知の事実だが、電気のライブのサポートとして同じステージに立ったのは初なわけで、とてもレアな機会だったと思う。オーディエンスにとっても、本人にとっても、電気にとっても。

 

 で。後半に改めて彼を紹介した時、「今日のサポートはSUGIURUMNです」みたいな言い方だったので「今日の? じゃあ明日は違うの?」と、ちょっとひっかかった。でも、特に発表はなかった。

 そして、翌日。緞帳が開いたら、その位置にまりんの姿が。でも照明、暗いし、前の方のお客さんはわかっただろうが、後ろの方は、最初は「誰?」とか「もしかして……まりん?」くらいだったのではないか、と思う。

 というのは、「人間大統領」の間奏で、瀧に名前をコールされた時のオーディエンスの反応が、ものすごかったからだ。「声出し25%OK」ルールに緩和されたとはいえ、基本的にはコロナ前より全然静かなフロアが、この瞬間だけは、怒号と悲鳴がブレンドされたみたいな大歓声に包まれた。

 

 「まりん、『ママケーキ』の一発屋なんで。『ママケーキ』と『ケラさん逃げて』で食いつないでる」

 「間違いなくこの会場のお客さん全部含めて、いちばん体内の水分が少ないと思う」

 「ミイラにもっとも近い男です」

 

 などと、言い放題言っている卓球&瀧、言われ放題言われているまりん、そしてもちろんオーディエンスも含めて、この場にいる人全員が、途方もない歓喜に支配されている、本当にハッピーな時間だった。終始。

 僕は、ちょっと前にTESTSETのインタビューをしたのだが( https://www.billboard-japan.com/special/detail/3621 )、その時まりんは、「実はライブがそんな好きじゃない感じなんだけど、近頃は、ライブやるのはいいなあって思うようになった」という話をしていた。

  この日もそう感じたんじゃないかな、と思う。アンコールで二回も「ママケーキ」の頭の部分、歌わされていたけど。で、三回目も歌わされそうになっていたけど。

  「N.O.」で、卓球が前に出て歌って、瀧はブースの卓球の位置に行って、サビでオーディエンスをあおって腕を左右に振っている途中で、瀧がまりんの肩をちょいちょいってやって、ふたりで肩を組んで腕を振り始めた時の光景で泣きそうになった、もしくは泣いた人、多いんじゃないかと思う。

 

 セットリストについても触れておきます。

 10月15日(土)のぴあアリーナMMの時は、こうでした。

(※私がぴあに書いたレポはこちらです)

lp.p.pia.jp

1.Set you Free

2.Shangri-La feat.Inga Humpe

3.いちご娘はひとりっ子

4.プエルトリコのひとりっ子

5.Missing Beatz

6.モノノケダンス

MC

7.HOMEBASE

8.ガリガリ君

9.The Big Shirts

10.Upside Down

11.Fallin’ Down

12.B.B.E.

13.Shameful

MC

14.WIRE WIRED,WIRELESS

15.MAN HUMAN

16.Baby’s on Fire

17.Nothing’s Gonna Change

18.Flashback Disco(is Back!)

19.N.O.

20.少年ヤング

21.UFOholic

En.富士山(Techno Disco Fujisan)

 

 で、12月2日(金)のZepp Haneda1日目は、こう。

 

1.Set you Free

2.人間大統領

3.Shangri-La feat.Inga Humpe

4.いちご娘はひとりっ子

5.プエルトリコのひとりっ子

6.Missing Beatz

7.モノノケダンス

MC

8.HOMEBASE

9.ガリガリ君

10.The Big Shirts

11.Upside Down

12.Fallin’ Down

13.少年ヤング

14.誰だ!

15.Shameful

MC

16.ジャンボタニシ

17.MAN HUMAN

18.Baby’s on Fire

19.Flashback Disco(is Back!)

20.N.O.

21.かっこいいジャンパー

22.UFOholic

En.カフェ・ド・鬼(顔と科学)

 

・「人間大統領」と「誰だ!」と「ジャンボタニシ」と「かっこいいジャンパー」が入った

・「B.B.E.」と「WIRE WIRED,WIRELESS」と「Nothing’s Gonna Change」が削られた

少年ヤング」が20曲目から13曲目に移動

・アンコールが「富士山」から「カフェ・ド・鬼(顔と科学)」に変更

 

 以上が、ぴあアリーナMMからの変更点。

 では、Zepp Hanedaの2日目、12月3日(土)のセットリストです。

 

1.Set you Free

2.人間大統領

3.Shangri-La feat.Inga Humpe

4.いちご娘はひとりっ子

5.プエルトリコのひとりっ子

6.Missing Beatz

7.モノノケダンス

MC

8.HOMEBASE

9.ガリガリ君

10.The Big Shirts

11.Upside Down

12.Fallin’ Down

13.誰だ!

14.Shameful

MC

15.ジャンボタニシ

16.MAN HUMAN

17.Baby’s on Fire

18.Flashback Disco(is Back!)

19.N.O.

20.かっこいいジャンパー

21.UFOholic

En.カフェ・ド・鬼(顔と科学)

 

 前日のセットリストから「少年ヤング」が削られて、1曲減った状態。アンコール時のMC、1日目は短かったのに2日目はけっこうダラダラやった、でも両日とも全体の尺は同じだった(ぴったり19時に始まってぴったり21時に終わった)理由は、そこだったのか。

 なお、私は行っていませんが、調べたところによると、セットリスト、福岡と東京の1日目が同じで、大阪と東京の2日目が同じだったようです。

 ぴあアリーナMMの時に、個人的に唯一残念だったのが「人間大統領」をやらなかったことだったので、あと「誰だ!」大好きなので(というより『ORANGE』というアルバムが大好き)、うれしい変更でした、私としては。

 

 それから。いちばん大変だったの、DEVICE GIRLS和田一基だったのではないかと思う。

 セットリストは、ぴあアリーナMMの時のものを軸にして何ヵ所か変えました、という感じだが、映像はそういうわけにいかないので。

 ぴあアリーナMMの時は、多くの曲の映像が横浜仕様にしてあって、横浜マリンタワー横浜スタジアムや観覧車や外人墓地などなどがばんばん出て来た。だから今回は、そういう横浜テイストを全部消して作り変えないといけなかった、という。

 

 あとひとつだけ。

 ファンはみんな知っているとおり、まりん、ライブに全面参加したのは25年ぶりだったが、基本的に、脱退後もずっと電気の近くにいる。電スチャや電気のアルバムの、プログラミングやジャケットデザインやマスタリングを手伝ったりして、メンバーではない形で、何度も作品に関わっている。瀧の逮捕で電気がSMAをやめるまでは、脱退後も移籍したりせず、レコード会社も事務所も電気と同じままだったし、電気が事務所をやめたあとも、まりんのマネージャーはミッチーだし。

 というふうに、脱退したのに、そして脱退して23年経っているのに、ずっと信頼関係を保ったままだし、ずっと仲がいいままなのって、めずらしいケースだよなあ。

 と、いつも思っていたが、この日、もう一度、改めてそう思った。ライブを観ながら。