2022年1月23日(日)、新生ピーズのツアーファイナルを観た
はる(大木温之/vo&g)、アビさん(安孫子義一/g)、みったん(岡田光史/b)、茂木左(ds)の新体制で、ミニアルバム『2021』をライブ会場&ネット通販限定でリリースし、横浜・京都・大阪・東京の4ヵ所を回ったツアーのファイナル。この体制になってから「Theピーズ」から「ピーズ」に改名もしている。
正確に言うと、2019年にはるが食道がんの手術で療養に入る前に、この4人で『Summer Session 2019』という4曲入りシングルを出しているし、ライブも始めていたが、作品を出してツアーを回ったのは、今回が初だし、ファイナルは渋谷クラブクアトロという大きめのライブハウスだったので、これが新体制のお披露目、というふうに捉えていいと思う。
で。メンバーや担当楽器やバンド名が変わったから、というだけでなく、ライブ自体のやりかた、演奏への取り組み方も含めての、新生ピーズになった、ということがよくわかるライブだった。
2017年6月9日に初の日本武道館をやる前に、はるは「これが終わったらライブのやり方を変える」ということを、公言していた。
「でっかい音出せんのは、50すぎの身体にムチ打てんのは、これがいいチャンスだなあと思って。こっから先は、音量を下げていかなきゃ、歌う時の音程もとれなくなってきてるから。でも武道館までは、でかい音でやらしてもらおうかな、なんでもここを区切りにできるチャンスかな、と思ってさ」
「耳とかの問題で、演奏がきっちりやれなくなるから。あと、叩く方も、筋肉の問題とかさ。そんな力まかせな、青春まかせじゃないような音の出し方とかを、改めて3人で……今までは、でかい音を出してたまたまひとつになった時に『気持ちいいね』だったのが、武道館終わってからは、ひとりひとり演奏して『あ、そうきたか、じゃあこっちは……』って、アンサンブルみたいなことを始めていかないと、この先ライブやれねえなと、俺、思うんだよね」
以上、当時、僕がリアルサウンドに書いた記事の中の、はるの発言より。
つまり、まさに、その言葉どおりのライブになっていた、ということだ。換気休憩とアンコールを含めて3時間弱、全部で38曲。アンコールの最後の2曲「脳ミソ」と「グライダー」だけはボリュームを上げて爆音でプレイしたが、そこまでの36曲は、出音を抑え、4人それぞれのプレイが細部まで聴き取れるように、それらの音が重なった時のアンサンブルの具合が楽しめるように──そんなライブのやり方だった。
10月30日(土)横浜ベイホールの、木村充揮との対バンで観た時も、そんな感じのライブだった。でもその次に、11月11日(木)新代田FEVERの、フラワーカンパニーズとの対バンで観た時は、やや爆音に戻っていた印象だった。
だから、かっちりと方針が定まったのは、このツアーからだ。と、言ってもいいのかな。いいと思う。
アンコールで「初夏レゲ」「どっかにいこー」「絵描き」「温霧島」といった、ワーッと盛り上がるタイプじゃない曲をやることが可能になったのも、そういうふうに方向を切り替えたからかも、と、思ったりもした。
で。その横浜ベイホールと新代田FEVERを観たあとに、別の現場で「あ! ピーズの新機軸とかぶってる!」と驚いたのを、思い出した。
真心ブラザーズだ。ツアーの東京の日に、別のライブレポ仕事が先に入っていて、観れなかったので、12月3日(金)の仙台Rensaまで行ったのだが、始まった瞬間、「あれ、Rensaって、出音制限が厳しいハコなのか」と思った。
それくらい小さかったのだ、4人の音が。いや、でもRensa、他のバンドもツアーでよく来る有名なハコだし、「そんな小さい音ではできません」っていう人も多いだろうし……。
と、不思議に感じながら観ていたのだが、3曲ぐらい終わったところで、「いや、違う。これ、わざとだ」ということに、気がついた。
出音を抑えている分、ボーカルのニュアンスや、各楽器の鳴りや、それぞれの音が絡むアンサンブル等が、細かいところまでよく聴き取れる。歌も楽器も、エフェクトをなるべくかけず、素の鳴りを重視して音を作っているようで、それも心地いい。
終演後、YO-KINGに確かめたら、やはり、意識的にそうしている、ということだった。で、「今、ピーズもそっちに進んでますよ」と言ったら、驚いておられた。
ただ、歌い方自体は、いつものとおりの感じだったし、真心の場合は、耳や喉の問題は、あんまり関係ないのかもしれない。「細部までしっかり聴かせる」ことに、新しい喜びを見出している、ということなのかもしれない。
以上、だからなんだと言われると困るが、長い付き合いの2バンドが、偶然、同じ時期にシンクロしたことをやっているのがおもしろいなあ、と思ったので、書いてみた次第でした。