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兵庫慎司のブログ

音楽などのライター、兵庫慎司のブログです。

アナログフィッシュ「No Rain(No Rainbow)」のMVについて

   6/6、アナログフィッシュ「No Rain(No Rainbow)」のミュージックビデオが公開された。

 

 この曲が入っているアナログフィッシュの最新アルバム『Almost A Rainbow』、昨年の9月にリリースされたものなので、なんで今さら?とか思ったが、観てみたら、あまりのよさに、なんか書きたくて、いてもたってもいられなくなってしまった。

 

www.youtube.com

 

  ただ、この曲については、正直、あんまり書くことはありません。

  これぞ下岡晃! な、長年このバンドを追ってきた耳で聴いてももうあからさまに大名曲で、現に今のアナログフィッシュのライブのハイライトのひとつになっていて、僕もいつもこの曲が演奏されるのを心待ちにしているのだが、リリースのちょっとあとに知人のライター柴那典が、この曲に関して、腹が立つくらい(なんでよ)的を射たことを書いていたので、それ以上自分がなんか書く気、なくなってしまったのでした。

  こちら。https://note.mu/shiba710/n/n44493fdf3432

 

  でも、今さらだけどあえてちょっと書くなら、柴那典が「愛は“コスパ”じゃない」と書いているように、この曲、確かに、「市場化の圧力」へのプロテストであり、人の行為やものの動きになんらかの対価を求めないと成立しない、今の世の中へのプロテストである。

  最小限の対価や最小限の努力や最小限の負担で、最大級のベネフィットを受け取ることを目指すのが資本主義社会だが、教育や政治というのは本来そのようなメカニズムで動いているものではない。だから、それでは機能しない。なのに、教育や政治にまでその論理を持ち込むから、おかしなことになってしまったし、今もどんどんおかしなことになり続けている──というような記述が、政治家ではないが教育者である内田樹の著書を読むとよく出てくるのだが、大きな意味でそれと同じようなことを表している歌だと思う。

  世の中が楽しく気分よく暮らしにくくなっていく、その原因のひとつを指摘している、というか。

  逆に言うと、楽しく気分よく暮らしていくための、ものの考え方のひとつを、提示しているというか。

 

  で。このMVなのだが、おそろしくカネかかっていない。

  メンバー3人とも一切出てこない。基本的に、東京の城南エリア(って言っていいですよね)の、あちこちの街の風景を撮って、つないだだけのもの。

  下岡晃がどこに住んでいるのか知らないが(佐々木健太郎と斉藤州一郎がどこに住んでいるのかは知っているのに。なんでだろう)、きっとこのへんが彼の生活圏なんだろうな、と思う。

   渋谷駅ハチ公口。渋谷駅南口。渋谷駅そばの桜丘町の桜坂。駒場東大前駅近くの踏切。淡島交差点そばの遊歩道んとこの小さな公園。世田谷線宮の坂駅そばの四つ角。井の頭通りの代々木上原駅に入るあたり。夕暮れの新代田駅、FEVERのそばの、環七の下に井の頭線が走ってるとこ。代々木公園の、代々木八幡駅に入るとこの交差点。などなど。

  強いて言えば、電車、もしくは線路を軸にして作ったのかな、という気はした。井の頭線世田谷線、千代田線、小田急小田原線東横線、銀座線が映っているので。

  あ、そうか。だからくるり岸田繁が絶賛ツイートしてたのか。違うと思います。

 

  ただ、カネはかかっていないが、手間はかかっている。

  特に、そのカットの太陽光の感じや、影の落ち方や、アングルの切り取り方や、そのアングルの中を人やクルマや電車が通るタイミングなど、もう何もかもが絶妙。って、何がどう絶妙なのかとても説明しづらいが、いちいち「そうか!」とか言いたくなる、観ていると。

  そして、それらの積み重ねによって「街の風景を描くことがそのままプロテスト・ソングになる」という、アナログフィッシュ下岡晃楽曲がやりたいことと完璧にシンクロした映像作品に仕上がっているのだ。

  これ、下岡晃が自分で作ったのかな、と思ったが、クレジットを見たら「笹原清明」となっていた。アナログフィッシュの写真をずっと撮っている人だ。げ。別人なのか。なのにこの作品か。本人かあんた。というか、メンバーか。と、言いたくなりました。

 

  何よりも、具体的にはなんにも言っていない映像なのに、何か、とても希望を感じさせるところが、とてもいい。すばらしいと思う。

  あれ、もう20年くらい前かな、佐内正史の写真を初めて観た時に、衝撃を受けつつも意味がわからなかったのを、よく憶えている。

  なんだこのカメラマン、ただ街の風景に向かってシャッター押してるだけなのに、なんでこんなにすごいんだ、と。

   その時の感じを、思い出した。ただ、今は、当時ほど「意味がわからない」とは思わなくなってるな、俺も、とも思った。

 

 このMVも、この曲も、というか今のアナログフィッシュ自体、ミュージシャンやライター等の音楽関係者から絶賛されること、本当に多いけど、特にライターとかの関係者のみなさん、ならば、できればもっとライブにも来ていただきたい、そしてそのすばらしさをどんどん広めていただきたい。

  と、ライターとかの中ではかなり観に行っている頻度の高い(と言っていいと思う)身としては、望みます。

  アナログフィッシュ、新代田FEVERで対バンシリーズをやっていて、1本目は4月24日(日)Alfred Beach Sandolと行った(レポはこちら。http://shinjihyogo.hateblo.jp/entry/2016/04/27/153633 )。

  次は2本目、6月25日(土)、相手はトリプルファイヤーです。

  ぜひ。

 

  ……とか書いていたら、同日同時刻に、仕事が入って観に行けなくなってしまいました。

  がーん。すみません。

  そっちも、仕事させてもらえるなら絶対やりたい、大好きなアーティスト関連の案件なので、やむをえないのですが。

  その次の毎年恒例「Natsufish TOUR」、8月10日(水)渋谷クラブクアトロは、観に行きます。

 

  6月25日(土)新代田FEVER、行ける方はぜひ。