チュートリアル徳井申告漏れの件で考えた、「『面倒力』の脅威」について
チュートリアル徳井義実の申告漏れ。7年で1億2千万円という金額や、個人的な旅行代や洋服代を経費として計上していたのが、所得隠しと認定されたことに関してはともかく、びっくりしたし、理解不能だったのは、2016年から2018年までの3年間、収入をまったく申告していなかったことだ。
そんなの、僕程度の収入の奴でもありえない。ましてや、長年テレビに出続けている、大金を稼いでいることが誰の目にもあきらかな芸能人なんだから、そんなの一撃で刺されるに決まってるじゃないか。というかよく3年も刺されなかったな。その方が不思議だ。
とにかく、なんで税務申告しなかったの? 会社組織にしてたのに! 税理士いるでしょ?
しかし。10月23日の夜、徳井が開いた記者会見での言葉を読んで、腑に落ちた。
あ、だからみなさんも納得してね、ということではありません。あくまで僕個人が感じたことです。
徳井はこう言ったのだ。
「納税の意思はあるが、想像を絶するルーズさによって先延ばしにしてしまい、3年経ってしまった、ということです」
わかる!
いる、そういう人!
というか、ある! 俺の中にもそういうとこ!
と、正直、思ってしまったのだった。
松尾スズキの最初の著作であるエッセイ集『大人失格 子供に生まれてスミマセン』(1995年・マガジンハウス刊、現在は光文社知恵の森文庫)に、『「面倒力」の脅威』という回がある。
それまでカーテンというものを買ったことがなかったが、日当たりのいい部屋に引っ越したらまぶしくて不眠に悩まされた、でも数ヵ月がまんした、理由は面倒くさかったからだ、という話から始まって、
「あきれてはいけない。面倒の力には侮り難いものがあるんですってば」
と、「面倒力」の脅威について綴られていくのだが、まさにこれだ。「面倒力」だ。
松尾さんはその「カーテン」の他にも、「部屋の4本の蛍光灯のうち3本が点かなくなった(2週間がまんしたそうです)ということと、2年前に買ったソファベッドが身体に比べて小さい(でも面倒だから買い換えない)という自身の例を挙げておられるが、自分に置き換えると、もう本当にいっぱいある、「面倒力」に負けて放置してしまっていることが。
邦楽までは終えたが、洋楽に入るところで力尽きて半年経過の、仕事部屋のCDラックの整理とか。なんかいつの間にかヒビ入ってたけど、今んとこヒビだけなのでそのまま静観して8ヵ月が経つ、ベランダのガラス戸とか。
という中でも、税務の申告って、相当高いレベルでの面倒だと思うのですね。
僕などは確定申告の面倒さに負けて、すべて人に任せてしまっているのだが、それでもその「任せる」前の作業すら面倒に感じるくらいだ(任せてる人が読んだら怒るだろうな、これ)。徳井の場合、金額がでかい分、僕など比較にならないほど面倒だろうし。
で、彼が「面倒力」との戦いに弱い人だとしたら。3年くらいほったらかし、というのもありえるなあ、と、納得してしまうのだった。
税理士にはせっつかれていたそうなので、「ああ、ヤバいなあ、やらなあかんなあ、でもめんどいなあ……」というような。
本気で脱税したかったわけではないと思う。だったらもっとうまくやるだろう。単に、本当に、「面倒力」に負けていたのではないか。
なんだったら、税務署に言われたら払えばええわ、そこまで追い込まれんと動かんわ俺は、という境地にまで達していた可能性もある。
税務署に言われたら、社会にその事実が晒されるし、追徴課税(3,400万円だったと報じられている)も食らう。その社会的制裁+3,400万円と面倒を天秤にかけて、面倒が勝っていた、という。
すごいですね、「面倒力」って。
と、だんだん彼をかばいたくなってくる、「面倒力」に負けがちサイドの自分なのだった。
まあ、「ありえない!」という人が大半だろうけど、「金額でかいけど『ありえない!』とは思わない」という奴もいますよ、という話でした。
※10月26日追記
本日、吉本興業のサイトにアップされた「チュートリアル徳井義実の税務申告漏れに関するご報告」によると、2009年の会社設立以来全然税務申告してなくて、税務署に指摘されて申告する、ということが3年に一回のペースで二度あった上に、その二度目の方は督促されても税務申告しなかったので、銀行預金を差し押さえられたそうです。
で、そのまた3年後が今回の件である、という、何かもう、「面倒力」どころのレベルではない話だったのでした。
すごいなしかし。預金を差し押さえられるまで払わないって。で、そのあとまたくり返すって。
私の妄想の及ぶ範囲ではありませんでした。失礼しました。