兵庫慎司のブログ

音楽などのライター、兵庫慎司のブログです。

そのへんで見かける有名人

  某バンドマンにきいた話。

 「○○(バンド名)の××(彼の名前)、笹塚駅で見かけた。家、このへんなのかな」

  などとツイートしてミュージシャンのプライバシーを暴いてしまう困った人は、だいたいにおいてファンではないという。ファンはそのへん気を遣ってくれるから見かけたとしても書かない、自分のことを知っているけど自分のファンではないロック好き、ぐらいの人が、気軽に書いちゃうのだという。

  なるほど、と、とても納得した。ミュージシャンに限らず、芸人さんでも俳優でも誰でもそうですが、みなさんやめましょうね、そういうふうに書いたりするのは。と言いたいが。

  困ったことに、「書きたい!」という側の気持ちも、すごくわかるのだった。特に東京に住んでいると。なんで。だってしょっちゅういるんだもん、そのへんに。

  僕は18歳まで広島にいて、大学で京都に4年住んで、就職してから現在までの28年ずっと東京にいるのだが、いまだにその「そこらへんを有名人がウロウロしている」という状態に、慣れることができない。いちいち「うわ!」ってなる。だからネタにしたくなる。ただ、場所が渋谷とか新宿なら、書いてもそんなに差し障りないと思うが、そのあたりに住んでいると推測される場所だったら、書くのはなしだと思うのでがまんする。学芸大学とか、桜新町とか。下北沢はセーフ、梅ヶ丘だったらダメ、くらいの感じだろうか。同じ理由で、特定の店に通っている、というのをばらすのもアウトにしている。

 

  でも本当は書きたい。という衝動に、コラムとかのネタに詰まった時に、よくかられる。ジョギングしていると毎朝のようにすれ違う、仲良く犬を散歩させている某芸人とその奥さんとか。よく行く銭湯で時々出くわす某ミュージシャンとか。このミュージシャン、昔一度インタビューしたきりで、幸い向こうは僕の顔を覚えていないが、サウナでふたりきりになった時は、それでも気まずかった。

  多くのミュージシャンが通っていて、その関係で僕も何度か行ったことがある下北沢の某飲み屋は、ミュージシャン以上に役者がいて、毎回「うわ、××がいる!」「ああっ、○○が入って来た!」ってなる。

  時々行く渋谷の居酒屋は、映画関係の人が多くて、三回に二回は某有名監督がカウンターで飲んでいるし、それ以外の人もいろいろ見かける。とても有名な某俳優の親子がカウンターにいて、気づかないフリで知人と飲んでいたら、向こう(親の方)から「ねえ、おにいさん」と話しかけてきて、「うわ、これは気づいている前提で答えた方がいいのかしら? 気づかないフリの方がいいのかしら?」と、とてもうろたえたものです。

 

  ああ、ネタにしたい。でも自粛。という毎日だが、数年前、「これはネタにされても、本人も自分のせいだと思うだろう」と判断し、書いてしまったやつもある。

  ジョギングしていたら、向かいから武田鉄矢が、両手にハンガーを持って、ぐるぐる振り回しながら歩いて来たのだ。

  びっくりした。武田鉄矢である、ということ以上に、『刑事物語』そのままのハンガーヌンチャクであったことに。しかも一回ではない。その後、何度もすれ違った、「ハンガーあり」で。彼は行き交う人たちと、笑顔で言葉を交わしている。僕も一度目が合ったが、にこやかに会釈をされた。

  なんで今またハンガーなんだろう。っていうかこれ、もうフリじゃない? 「さあネタにしたまえ」って話じゃない? うーん、でもウェブだとちょっとあれかも、じゃあ紙ならいいか。と思って、kaminogeの連載コラムで、ネタにさせていただいた。

  で、書いたと思ったらばったり見かけなくなった数日後、「ステージナタリー」でその理由を知ることになる。武田鉄矢、福岡博多座の芝居で、29年ぶりにハンガー・アクションをやることになったので、毎朝のウォーキングの時に振り回して、感覚を取り戻していたのだという。で、本番が近づいて福岡に行ったから、見かけなくなったのだった。

  その囲み取材の記事によると「ハンガーのせいで仲良しだった犬が全然寄ってこなくなった」とのこと。「いつもすれ違うおっさんライターが驚いていた」とも言ってほしかった。言わねえよ。

 

  それから。これも数年前、そしてこれも朝のジョギングの時。やけに派手なTシャツを着たスリムなおっさんが走って来る。あ、あれ、FM802のTシャツだ。じゃあ、関西人なのかな。それか、業界人なのかな。

  と思っていたら、「兵庫くん!」と声をかけて来た。関西人で業界人だった。ウルフルケイスケさんでした。

  これもすぐkaminogeでネタにした。ケーヤン、走るたびに「今日は駒沢方面へ、7キロ」みたいに、場所も含めて自らツイートしているので、書いても問題なかろう、という判断でした。なお、ケーヤン、最近はほぼ一年中ひとりで全国を回っておられるせいか、全然出くわさなくなりました。