4/28(木)横浜にぎわい座、真心ブラザーズ「サシ食いねぇ!」ツアー初日公式レポ
このテキストは、ライブ終了後にレーベルがウェブの音楽ニュースメディア等に一斉送信するプレスリリースとして、「どこにアップされてもOK、無記名でも記名でもOK、一部抜粋とか引用とかでもOK」という前提で、ご依頼をいただいて書いたものです。
で、一斉送信後、数カ所のニュースメディアにアップされたのを確認したので、「どこにアップされてもOK」なので自分のブログにもアップしておきます。
「あたたかいぼくの部屋」にとりみだし、桜井さんのホーム感に爆笑する、ほんとにいいライブでした。では以下、レポです。
真心ブラザーズ、YO-KINGと桜井秀俊が弾き語りで対決する、そして通常のライブハウスではない会場を選んで全国を回る、という趣旨のアコースティック・ツアー、『サシ食いねぇ!』が4月28日(木)、桜井の地元である横浜・桜木町の寄席、横浜にぎわい座から始まった。なお、このツアー、YO-KINGも桜井も、その日のセットリストはスタッフも知らないまま、本人がステージで歌うまでわからない状態で行われるという。
先攻はYO-KING、真心ブラザーズを活動休止した直後にリリースしたソロアルバム『愛とロックンロール』収録曲の「FOREVER YOUNG」でライブをスタート。
「今日は僕が先攻で。もう(後攻の桜井が)出にくいくらい、いいライブをやります。今日は懐かしい曲もいっぱいやります」と宣言、拍手を浴びる。
以降、1曲ごとに短いMCをはさみながら、未発表曲、カバー曲、他アーティストへの提供曲など、レアな曲を次々に披露。
特に7曲目、名前がまだ倉持陽一だった頃(1991年)の初のソロアルバム『倉持の魂』の1曲目、「あたたかいぼくの部屋」を歌った時は、会場がどよめいた。桜井の大学卒業試験のため真心の活動が休みだった時期に作られた『倉持の魂』は、リリース直後に真心が活動再開したこともあり、ディスコグラフィーの中では埋もれ気味な存在だが、このアルバムを偏愛する古くからのファンが多い、隠れた名盤。このアルバムの曲を生で聴ける日が来るとは……という感慨に、にぎわい座が包まれた。
「ここは本当に地元で、中高時代をここですごしたし、今もこのあたりに住んでいる」という後攻の桜井は、2012年に地元のテレビ局、TVKに依頼されて書き下ろした開局40周年記念ソング「カモン! カナガワン!」でスタート。イントロが始まると同時にハンドクラップが起こり、「♪ここに住んでてよかったよ」(桜井)「♪よかったよ!」(客席)の掛け合いもばっちりキマるなど、大ウケ。歌い終えた桜井も「めっちゃホームじゃないですか!」と驚くほど。
その後、『I Will Survive』収録の「メトロノーム」をしっとりと聴かせたり、地元ということで中学時代の思い出を歌にした「あいつがムショからやってくる」を歌ったり、レアな曲を次々とサービス。
ちなみに、「あいつがムショからやってくる」その曲の歌詞に出てくる同級生が最前列どまんなかに座っていることに曲の途中で気づき、思わず曲の中では偽名に変えてあるその彼の名前を本名で歌う、というサプライズ(?)もあり。
ラストは、「サマーヌードの影に隠れた名曲」(桜井)、「Dear,Summer Friend」でアッパーにしめくくった。
ふたり揃ってのアンコールでは、この日発表になった、今年10月16日神戸SLOPEを皮切りに17公演を行う『GREAT ADVENTURE 20th』ツアーを改めて告知。YO-KING曲、桜井曲、超初期の某大名曲など4曲をプレイ、大拍手の中、終了。桜井が思わず「……いいツアーになりそうですね!」と口にするほど、ステージの上も下も大充実の2時間だった。
この横浜にぎわい座を含め、各地でソールドアウト続出のこのツアーは、この後全国14カ所を周り6月26日福島 創空間 富や蔵でファイナルを迎える。
4/24(日)新代田FEVER、アナログフィッシュ×Alfred Beach Sandolを観ました
アナログフィッシュが始めた、対バン企画の一発目、Alfred Beach Sandolを迎えてのライブ。この企画、それぞれワンマンくらいたっぷりやるという趣旨のようで、次回は6/25(土)に同じく新代田FEVERでトリプルファイヤーを迎えて行うことが決まっている。
まず、Alfred Beach Sandol。僕は初めてライブを観たんだけど、この歌とギター/ウッドベース/ドラムの3人組のステージ、なんでアナログフィッシュが呼んだのか、なんで呼ばれたのかが、なんだかとてもよくわかる感じだった。のちのMCで佐々木健太郎は「レーベルメイトです」と言っていたが、たぶん、だからではなく。
似てない、でも近い。かぶらない、だけど同じ匂いがする。というようなことがが、観ている間ずっと頭の中をグルグル回り続ける、そんな印象だった。
音圧に頼らない。音が隙間だらけなのを気にしない、というかむしろ隙間だらけの方がいい。歌詞は必要最小限に。具体的に言葉にすれば、そういう感じだろうか。
で、アナログフィッシュ。これ、僕個人の感じ方かもしれないが、佐々木健太郎はイケイケにストレートで、下岡晃はラジカル、みたいな選曲だった気がした。健太郎は歌声が朗々と伸びるようなレパートリー、下岡晃は「No Rain(No Rainbow)」みたいなキラーチューンもやるけど、その分実験的で新しいことにトライするような曲もやる、というような。
で、いずれも、今回も、すばらしかった。
まさにワン&オンリーだと思う。で、アナログフィッシュの名前くらいは知ってるよ、という人が持っているイメージよりも、きっと、とっつきやすいし、間口の広いことをやっているとも思う。もっといろんな人に入ってきてほしい、と、入ってきたが最後出られなくなっている、FEVERに集まったファンを見ながら思いました。
以下、完全に余談。
僕はサニーデイ・サービスの田中貴が三宿Webでやっている夜中のイベント(DJするやつです)を手伝っているのだが、ゲストDJで、何度か健太郎に来てもらったことがある。
いちばん最近来てもらったのは2週間前、4月8日だったんだけど、その日、健太郎はアコースティックギターを背負ってWebに現れた。
「何、練習の帰り?」「いや……あの……」「……え? 歌うの?」「……はい。タイミングがあったら、歌おうかなと思って」
で。タイミングもクソもなく、自分の持ち時間になった瞬間に歌い始めました。
マイクの用意が間に合わなくて、生声と生ギターで、Webのフロアをねり歩きながら。自分の曲を歌ったり、エレカシの曲を歌ったり。
お客さん、びっくりしてました。喜んでたけど。
それから、毎回このイベントに来てくれるお客さんで、アナログフィッシュは名前しか知らなくて、時々DJに来る健太郎のことを「自分の出番が終わると泥酔して踊り狂ったり酔いつぶれて寝たりする男」としてしか認識していなかった人が、その生歌を聴いて「えっ、こんなにいい歌を歌う人なの?」とびっくりして、FEVERに行ったらすっごくよかったそうです。あまりによかったので、その2日後の、4/26の渋谷gee-ge「COUCH with 佐々木健太郎」にも行ったそうです(私は行ってませんが)。
Webの時は本人に、「ギター持ってくるんなら前もって言ってよ。いきなりだったら、PAとかの用意できなかったじゃん!」とか言ってしまいましたが、そういうこともあるのなら、歌ってもらってよかったな、と思いました。
「歌ってもらった」わけじゃないけど。「勝手に歌われた」に近いんだけど。
フラワーカンパニーズ全都道府県ツアー15県目&17本目、4/22名古屋E.L.L.を観ました
フラワーカンパニーズ、2016年1年かけて全都道府県を回るツアー「夢のおかわり2016」、その15都道府県目で17本目、4/22(金)名古屋Electric Lady Landを観てきました。
フラカンの地元名古屋で出身のハコ、つまり本当のホーム。2000年に移転しキャパも格段に大きくなって、フラカンが地元のバンドとして出ていた頃とは違うサイズになっていますが、みっしり埋まっていました。
このツアー、僕が観るのは、4県目・6本目の3/12(土)横浜BAYSIS以来2本目だった。
ツアー始まったあたりで、音楽誌「B-PASS ALL AREA」で4人にインタビューをした時に(こちらです http://www.shinko-music.co.jp/main/ProductDetail.do?pid=164283X )、ミスター小西はこのツアーについて「内容に関しては、どんどん変わっていくと思うんですよ。今やってるセットリストのまま、年末まで続くってことはどう考えてもないだろうし。だから、始まりから終わりまでで、すごく変化のあるツアーになると思う」と言っていたのだが。
まさにそのとおりだった。というか、全55本のツアーの6本目と17本目でここまで変えるか?というくらい変わっていた。選曲も、構成も。
横浜でやらなかった曲も、横浜でやってたけど外した曲も、何曲もあり。セットリストの中で置き位置が変わった曲もあり。かなり新鮮でした。
今回のこの名古屋、私、何か書く依頼をどこかから受けて行ったのではなくて、単に観たいから行ったんだけど、行ってよかった。
というか、6本目と17本目でここまで変わっている、ということは、この先もセットリスト、「ツアーが進むにつれてだんだん構成が変わっていく」というよりも、「どんどん変えてどんどん試していく」みたいなツアーになるのではないか、と思う。
つまり、何回観ても新鮮なツアーになるのではないか、と思う。
なのでファンの方、お住まいの県じゃなくても、近くの県に来たら、二度、三度観てみるのも、よいかと思います。
なお、ファンは誰もが熟知していることだが、フラカンのライブの場合、「鈴木圭介のノドの調子」「鈴木圭介のMCにおけるしゃべりすぎ」のふたつが二大心配事ですが、この日は、前者はばっちりOKだった。
後者に関しては、中盤のMCで地元・東山動物園のイケメンゴリラ、シャバーニの話をしたくてたまらなかったらしく、その話を延々して、終わったと思ったらまたはじめようとして、その時は一瞬危うかったが、グレートの「おいっ、まだ続くんか!」という制止で、ことなきを得ました。
あと、バンドの演奏全体もよかった。特にドラムミスター小西、今日は調子いいなあ、いいタイム感で2拍4拍のスネア入ってるし、ドラムがいい音で鳴ってるなあ、と思って観ていたら、最後の最後でスティック落としてた。リズムはほぼ乱れなかったけど。
それから、この日のステージで、ドラゴンズのマスコットキャラクター、ドアラの耳をステージ上でつけて、お客さんをバックにうれしそうな顔をしているギタリスト竹安堅一の写真が、グレートのインスタに上がっているので、まだの方はぜひご覧ください。
「フラワーカンパニーズ47都道府県ワンマンツアー 夢のおかわり2016」のスケジュールはこちら。 http://www.flowercompanyz.com/yumenookawari2016/
銀杏BOYZのリリースとツアー、峯田のドラマ主演
銀杏BOYZ、ニューシングル「生きたい」をリリース。
以前からライブで歌っていた曲で、「人間」「光」に続く三部作の完結編。カップリングはクボタタケシがリミックスした「ぼあだむ」。新音源としては2年ぶり。
で、このリリースに続いて、バンド編成でツアーに出る。6/22(水)東京Zepp DiverCityから8/3(水)大阪なんばHatchまで7本ライブハウスを回った末、 8/17(水)には東京・中野サンプラザで11年ぶりの(前回は渋谷公会堂)ホールワンマンも。
以上、いずれもとうに発表されていることだが、僕は1月にリキッドルームの「音楽と人」のイベントに、ザ・コレクターズとバンド編成の銀杏BOYZが出演 したのを観に行った時に、ライブすげえよかったけど、こんなふうに単発でたまーにライブやるんじゃなくてコンスタントに活動してほしい、バンド編成で全国をツアーして 回るとかの普通の活動ができる銀杏BOYZにまたなってくれることを俺はあきらめられない、みたいなことを、このブログに書いた(こちらです http://shinjihyogo.hateblo.jp/entry/2016/01/20/153026 )。
それを書いた頃にはこのリリースも全国ツアーも、発表されていなかったものの、とうに決まっていたのは間違いないわけで、「大変失礼しました!」と、声を大にして申し上げたいです。
で、ただただ、うれしいです。
なので、峯田がNHK BSプレミアムのドラマ『奇跡の人』の主演を務める、俳優としてのデビュー作である映画『アイデン&ティティ』以来13年ぶりに麻生久美子と共演する、と いうことを知った時も、ただうれしいだけだった。「俳優仕事もいいけど、銀杏は……」とかいうのがないので。
『アイデン&ティティ』の試写で、「やばい! 役者として、想像以上に輝いてしまってる。俳優になっちゃうかも。いや、本人にミュージシャンやめる気がなくても、そっちのオファーで断れないタイプのや つがひっきりなしに来て、押し流されてしまうかも」とか心配になったことを思い出した。
劇場へ観に行った『ボーイズ・オン・ザ・ラン』も、『アイデン&ティティ』の時と同じように、峯田そのものなのにあの役にしか見えなくて、とてもよかっ た。『色即ぜねれいしょん』の、島のペンションのあんちゃんの役も然り。『植物男子ベランダー』のゲスト出演的なあれも。もちろん『少年メリケンサック』 も。
あと、舞台『母に欲す』までよかったのには、びっくりした。映像の芝居と演劇の芝居って違うものなのに。
とりあえず、役者峯田和伸にがっかりしたことは一度もないことが、こうして書いてみて、改めてわかりました。
『奇跡の人』は、4/24(日)22:00スタート。
「生きたい」の、
「真っ黒いのがつめたいよ。」
「真っ黒いのがつめたいの。」
のリフレインと、ラストの
「生きたくってさ。生きたくってさ。生きたくってさ。なくしたもののために。
なくしちゃったために。そうやって生まれた罪を こうやって抱きしめるんです」
のところ、何度聴いても、そのたびにずしーんときます。自分そのものだと思う。
http://www.nhk.or.jp/pd/kiseki/
https://www.youtube.com/watch?v=9YcNQXY2wa8
THE JAMと私
高校生の頃、なので1980年代中盤の広島でのこと。
ヤマハの上のホールだったか、別の場所だったか忘れてしまったが、「輸入レコード市」みたいな催しがあった。広島の輸入盤屋(数えるほどしかなかったが)に加えて、他府県のお店も何軒もやってきて、そこで1週間だか2週間、レコードの特売をやりますよ、というやつだ。あ、なので、まだ、レコードからCDに主流が映るギリギリ前の話です。
行った。何時間もいた。当時高校生だった自分のカネのなさ、今思い出しても驚異的なほどなので、とにかく迷いに迷った。
手ぶらでは帰りたくない。でも、すべったものを買いたくない。
悩みに悩んだ末、THE JAMの『SNAP!』という2枚組のベストアルバムを買った。THE POLICEは大好きだったし、THE CLASHとかも聴いていたけど、THE JAMはラジオで流れる曲ぐらいしか知らなかったので、まずはこのベスト盤からちゃんと聴こう、と。
家に帰った。1枚目を聴き終わり、2枚目をターンテーブルに載せた。で、愕然とした。
1枚目と同じレコードだったのだ。
最初は自分がかけ間違えたのかと思った。レコードを手にとり、中央のレーベル部分を見てみる。ちゃんと「DISC 2」となっていて、「DISC1」とは異なる曲目がプリントされている。
勘違いなんだろうか。DISC1に変え、聴いてみる。もう一度DISC2を聴いてみる。
やはり同じ。どっちも「In The City」から始まる。で、それが終わると「Away From The Numbers」になる。
つまり、まんなかのレーベルを貼り間違えた不良品だったわけです。
返品しようと思い、翌日行ってみたら、もう輸入レコード市は終わっていた。
ちなみに、初めてちゃんと聴いたTHE JAMがどうだったかとかは、ショックすぎて憶えていない。というか、そのレコード、ロクに聴かなかったと思う。THE JAMをちゃんと聴き直す気持ちになれたのは、CD時代になってずいぶん経ってからだ。
当時からのレコード、今もすべて手元に持っているのだが、探してみたら『SNAP!』、ありませんでした。捨てちゃったんだろうか。
アバウト・ザ・ヤング・アイデア:ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ザ・ジャム
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最近リリースされたこれを入手し、よく聴いているのですが、そのたびにこのことを思い出して軽く憂鬱になるので、以上、書いてみました。
ちなみに『SNAP!』はこちら。
『CHOCOLAT & AKITO MEETS THE MATSON 2』について
SPA! の「Music」コーナーで大きく取り上げられていたり(3/8号)、リアルサウンドに小野島大さんによるインタビューがアップされたりしている(こちら http://realsound.jp/2016/03/post-6622.html )、ショコラと片寄明人が、ジョン・マッケンタイアを通じて知り合った(らしい)、ロサンゼルスのTHE MATSON 2と一緒に作ったアルバム『CHOCOLAT & AKITO MEETS THE MATSON 2』。
すっごくよくて、最近こればかり聴いている。
そのリアルサウンドのインタビューによると、THE MATSON 2から送られてきたトラックにメロディをのっける、という方法で「一緒に作った」作品らしい。
9曲入りで、1曲インスト、1曲英語詞、あとの7曲は日本語詞。英語詞の曲は、THE MATSON 2と実際に会って一緒に作ったそうで、その時彼らから「英語の歌にしたい」というリクエストがあって、そうしたという。
で。英語詞の曲もインストもすばらしいんだけど、やはり、日本語詞の7曲のほうに、より強く、耳を奪われる。
その異常な洋楽愛&洋楽知識を考えると、英語詞で歌うほうが自然なタイプのミュージシャンに思えるし、現に同世代だったり仲間だったりのミュージシャンたちはそうしていたのに、その中で、ロッテンハッツ時代から日本語で歌うことにこだわってきた(ように僕には思える)片寄明人が今綴る歌詞、「すごいレ ベルまで到達したら簡素化した」みたいなことになっている。
基本的に、一貫して「生きることと死ぬこと」に向き合う歌詞を書いてきた人であり、それはこのアルバムでも変わらないが、2曲目の「Nothing to Fear」なんて、もう、その究極だと思う。
こ う生きたい、こう暮らしたい、こう考えたい、こう感じたい、という理想を、シンプルに綴っているだけなのだが……そう、「だけ」っていうくらい、一見誰にでも書けそうなほど平易な言葉で書いているのだが、確かにそうだな、理想だな、まるで解脱したあとみたいだな、仏様みたいだな……あれ? 何? じゃあこれ、死後の世界の歌? みたいなことまで、グルグルと考えてしまう、聴いていると。
ショコラとの歌い分けやハモリ、トラックとの共存のしかた、メロディに言葉をのっけた時の響き方、抑揚など、もういちいち「うわあ、ほかにないよなあ、こんな音楽」とつくづく思う。
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津村記久子の新刊が出ていたことを知らなかった
津村記久子が、『この世にたやすい仕事はない』(日本経済新聞出版社)で、第66回芸術選奨文部科学大臣賞新人賞[文学部門]を受賞したことが、3月9日に発表になった。
ということを知って、びっくりした。受賞がではなくて、その本が出ていたことを、自分が知らなかったことに、だ。
僕は津村記久子という作家は、単行本が出たら即買って、文庫になったら買い直す、そして両方持っておくくらいなので、まあそこそこ熱心なファンといってよいと思う。
昔、インタビューをさせてもらったのが縁で面識ができ、文庫の解説を書かせていただくという光栄にあずかったこともある(角川文庫の『ミュージック・ブレス・ユー!!』という小説。解説はともかく、ロックどっぷりな10代をすごした方には間違いなくぶっ刺さる、すばらしい作品です)。
なのに、受賞するまで、この『この世にたやすい仕事はない』が出ていたことを、知らなかったのだった。
あせって買いに行った。奥付を見た。4刷だった。1刷は2015年10月15日。げ、5ヵ月前じゃん! ネットでいろいろ見てみたら、刊行当時、いろんなウェブや雑誌などで書評が出ていたことも知った。
なのに、なんで自分が知らなかったのかの理由は、はっきりしている。単に、誰にもおすすめされなかったからだ。
たとえばこれが樋口毅宏だったら、僕は彼のツイッターをフォローしているので、本が出る前からうるさいくらい本人の告知が始まるので知ることができるが、津村記久子はツイッターとかブログとか公式サイトとか、一切やっていない。
たとえばこれが伊集院光の映像作品だったら、amazonがしつこいくらいお知らせしてくるので、うっかり2回予約して2枚届いちゃったりしたわけだが、僕はたまたま津村記久子の作品をamazonでは買ったことがなかったらしく、お知らせが来なかった。
たとえばcakesなんかの記事は、書籍のパブリシティを兼ねていることも多いので、それで知った本を買ったりすることもよくあるが、この作品はそういうルートでも、僕の目に届かなかったことになる。
出版社の書籍部のツイッターや、知人の編集者のツイッターなどもフォローしているので、そこから情報が入ってくることもあるが、このたびの本が、彼女としては初めての日本経済新聞出版社からの刊行だったこともあってか、そのルートで知ることもなかった。
というわけで、本が出たことを知らなかったわけです。
おまえがバカなだけだろ、と言われたらそのとおりなんだけど、これ、ほんとにヤバいと思った。
自分が必要なものも必要でないものもとにかくばんばんおすすめされまくる、という生活にすっかり慣れきってしまっていて、必要だけどおすすめされないものもあることを忘れていた、という己の怠惰さを、つきつけられた感じがしたのでした。
なお、『この世にたやすい仕事はない』、津村記久子の得意中の得意であるところの、仕事小説の到達点、と言っていいくらいおもしろかった。全5話からなる短編連作集なんだけど、読み終わるのがとてももったいなかったです。
- 作者: 津村 記久子
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/06/23
- メディア: 文庫
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