尾崎世界観『祐介』を一気に読んだ
尾崎世界観が書き下ろした小説『祐介』。
一気に読んだあとで、わりと枚数少なめな作品であることに気がついたが、それだけの理由ではなく、「えっもう終わり?」「ここで?」「続きは?」という気分になった。
要は、それくらいおもしろかった、ということですが。
ほぼ自伝なんだろうな、実体験がベースなんだろうな、という内容だが、「自分語り大好き」みたいなうっとうしさはきっぱりとゼロ。
というか、自分を語っていない。自分を書いているんだけど。これ説明難しいが、でも本当にそういう感じがする。
強い筆力で、読み手をみんな当事者にしてしまう。特に、匂いや味や音や温度、つまり五感にまつわることの執拗な描写が、読み手をたちどころにそうさせる。
にしても。cakesで連載されている燃え殻の『ボクたちはみんな大人になれなかった』もそうだし、尾崎のこの小説もそうだが、何か、これまでの私小説とは違う、新しい私小説のすぐれた書き手が、小説家とかコラムニストとかを本業にしていない人たちの中から、つまり他ジャンルから次々と現れる、みたいな現象がすでにあるってことなんだろうか、これは。
又吉直樹の『火花』も、大きくいえばそれかもしれないし。
何か、あせります。僕は作家ではないし、そんな能力も書く気もないし、そもそも求められてもいないが、「何か書いてカネもらって食っている」というジャンルの仕事ではあるので。
本業じゃない人たちにこんなすばらしいものを書かれると、立場がないというか、「俺は何やってんだ」というか、「やめたら?」みたいな気分になるというか。やめませんが。
メンバーがいなくなり、ひとりになってしまった祐介は、もうバンドをやめようと思っている時にライブハウスでフラワーカンパニーズを観て、「吐きたくなる ほど愛されたい」で涙が止まらなくなって、「もう少しバンドをやってみよう」と決意する……ことになるはずだ、現実に即して物語が続くのなら。
早くそこまで書いてほしいです。で、さらにその先も書いてほしいです。
というか、とにかく続きが早く読みたいです。