兵庫慎司のブログ

音楽などのライター、兵庫慎司のブログです。

クラブハウスとラジオの話、というかラジオの話

 

 日常的にラジオをよく聴いている人で、クラブハウスにハマっている人って、少ないんじゃないか、と思う。あくまで僕個人の印象だが。

 

 クラブハウスってラジオみたい、という声があることは、知っている。TBSラジオ深夜の馬鹿力』2021年2月8日の放送でも、伊集院光が、そのことについて触れていた。

 クラブハウスは、招待制だったり、アンドロイド端末では聴けなかったりして、誰もが自由に触れられる音声メディアではない、そこがラジオとは違う、というような話を、彼はしていた。

 勝手に補足すると、自分がそこにいて話を聴いていることを、周囲が認識できるようになっていることや、挙手して当てられれば自分も発言ができる、だから面識のない相手と直でコミュニケーションが取れる、つまりSNSであることが、ラジオと違う。というのも、大きいと思う。

 しかし。そのへんを全部無視して、単なる「人の話を聴くメディア」として捉えると、もうこれ以上増やしたくないのです、私。

 

 中学高校の頃は、1日中ネタを考えて『ビートたけしオールナイトニッポン』にハガキを送る日々だった。自ら進んで何かを書く、という行為をしたのは、それが初めてだった。

 それから、大学を卒業して就職した先は、長年聴き続けているラジオDJが経営する会社だった。

 つまり、ラジオで人生が決まって、今に至っている人間である、自分は。

 勤め人になって以降は、『電気グルーヴのオールナイトニッポン』あたりを最後に、いったんラジオから離れた。が、会社を辞めてフリーのライターになる、その数年前から再びラジオを聴くようになった。そして、2015年の4月にフリーになってから、さらに拍車がかかった。

 それから1年が経った頃。月〜木の朝8:30〜11:00に、TBSラジオで『伊集院光とらじおと』が始まると知った時の絶望感は、今でも忘れられない。

 やめてよ! 聴かなきゃいけないじゃない! せめて勤め人だったらあきらめられるのに!

 というわけで、2016年4月11日以降、僕の月〜木の午前中のスケジュールは『らじおと』に縛られることになる。その時間、ラジオを聴きながら働ける職種もあるが(トラックの運転手とか)、ライター業は、それは無理なので。

 よって、しばしの試行錯誤期間を経て、その時間を「ランニング、その後ジム」に当てることで落ち着いて、現在に至る。

 

 それ以降は、聴くラジオをとにかく増やさないことを心がけながら、暮らしてきた。それでも、絞りに絞っても、じわじわと増えていく。

 高田文夫が出る月金と、清水ミチコとナイツの組み合わせが最高の木曜は、『ラジオビバリー昼ズ』を聴くのをがまんできなくなったり。

 自分が大好きな番組、テレビ東京『ゴッドタン』のプロデューサーである佐久間宣行が、『オールナイトニッポン0』を始めたり。

 ラジオ書き起こし職人、みやーんZZのサイトで読んでいるうちにがまんできなくなって、『安住紳一郎の日曜天国』を、聴くようになったり。

 『ACTION』が終わってホッとしたと思ったら、そこからの派生で『宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど』がスタートしたり。

 

 せめて、TBSラジオニッポン放送だけで抑えたかったが、ラジオ業界で売れっ子の放送作家、ミラッキこと大村綾人とうっかり知り合ってしまい、彼がbayfmで、出る側としてスージー鈴木とふたりで始めた『9の音粋』月曜が、やたらおもしろくて、聴かざるを得なくなったりもした。

 もっと前だが、関西の音楽ライター、鈴木淳史と知り合ってしまったのも、痛かった。彼が編集者の原偉大とふたりで、大阪のABCラジオでやっている『よなよな木曜 なにわ筋カルチャーBOYZ』を、チェックしないと落ち着かなくなったので。

 

 2020年9月から、ナイツがニッポン放送で、月曜〜木曜13:00~15:30で『ナイツ・ザ・ラジオショー』を始めた時は、もう怒りすら覚えた。そして、自分の中ではっきりと「聴きません!」と決めた。

 『木曜ビバリー』と、土曜9:00〜13:00の『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』だけで、もう手一杯なんだから、こっちは!

 なので木曜は、『ビバリー』が終わったら、心を鬼にしてラジオを切る。しかし、翌日の金曜は、『ビバリー』から、ついそのまま『中川家・ザ・ラジオショー』を聴いてしまったりすることもあるので、まったくもって油断ができない。

 

 がまんしているものは、まだまだある。火曜と日曜の爆笑問題とか。火曜のCreepy Nutsとか。木曜のハライチとか。土曜深夜のエレ片とオードリーと空気階段とか。

 本当はジェーン・スーだって、『たまむすび』だって聴きたい。『アトロク』を聴き始めたらおしまいだ、朝も夜もTBSラジオに縛られることになる、と、己に対して固く禁じている。

 そもそもの資質として、残りの人生の起きている時間のすべてを「ラジオを聴くだけ」で、余裕で塗りつぶせるような人間なんだから、自分は。

 

 あと、本業は音楽ライターである、というのも、忘れてはならない。音楽も聴かなきゃいけないんだから。

 って、なんだ「聴かなきゃいけない」って。義務か。違います。仕事ですが、単に好きで聴くところから始まっているんです、もちろん。

 が、それを言ったら、ラジオだって、最近、若干だが、そうなりつつある。この間、三才ブックスが出している『必聴ラジオ2021』というムックから原稿依頼があって、5つの番組について書いたし。

 

 というわけで、聴けば絶対おもしろいことがわかっているラジオを大量にがまんしているのに、素人がしゃべっていて、トークのおもしろさの面でラジオに劣る、クラブハウスに割く時間は、ない。という判断なのでした、僕の場合。

 あ、ただし、「自分の好きな人はラジオとかやらない、その人のしゃべりが聴きたい」という動機で、クラブハウスを聴く、というのは、理解できます。

 

 まあ、時間がないとか言い出したら、ラジオやクラブハウスに限らないんだけど。

 ネットフリックスやアマゾンプライム等の映像配信サービスといい、Spotifyなんかの音楽配信サービスといい、一流の芸人たちが惜しみなく持ちネタをばんばんアップしているYouTubeといい、スマホでいくらでも読めちゃうマンガといい、もうあきらかに「おもしろいものが供給過多」な世の中なので、現在は。

 ついて行けない。もともと、アルバム1枚あれば1週間すごせるような、雑誌は広告ページまで読まないと気がすまないような、買った本は何度も読み返すような、そんな10代を送ってきたんだから、こっちは。

 佐久間宣行の「コンテンツ全部観る男」っぷりとか、ほんと、信じられない。間違いなく、俺の何倍も忙しいのに。どうやって時間を作っているんだろう。ちょっとした空き時間とかもフル活用して、常にスマホでなんか観ている、と、ご本人はラジオでおっしゃっていたが。

 

 あと、かつての自分の雇用主のラジオも、最近、聴くようになってしまった。数十年ぶりに。

 NHK-FM、日曜17:00からの、渋谷陽一の『ワールドロックナウ』。毎週日曜の夕方は、ほぼ100%ライブに行っていたのが、新型コロナウイルス禍でそうでもなくなった、だから時間ができたのが、直接的なきっかけではある。

 が、株式会社ロッキング・オンで働いていた頃の、「会議や取材立ち会いやダメ出しで、毎日毎日会社で聴いている声を、家でも聴く気にはなれません」というメンタルから解き放たれたのも、大きいと思う。

 NHK-FMといえば、その前の時間、日曜16:00からの、片寄明人の『洋楽 グロリアスデイズ』も、おもしろいのよねえ。