兵庫慎司のブログ

音楽などのライター、兵庫慎司のブログです。

「俺たちの明日」の話  

 エレファントカシマシといえば、「今宵の月のように」と「俺たちの明日」。ということになっている風潮に、実は、ちょっとだけ違和感がある。「今宵の月のように」はいいが、「俺たちの明日」の方に。

 なぜこの曲がそういう存在であるのか、については、よくわかっているつもりだが、「今宵の月のように」と比べると、自分の中の「好き度」が負けるというか(「今宵〜」を好きすぎる、という可能性もある)、「確かにいい曲だけど、エレカシには他にもすげえ曲いっぱいあるぞ」的な、己の中の「めんどくさいファン」成分が発動、みたいなところがある、というか。

 

 その理由について、いろいろ考えたこともあったが、答えが出ないので、そのまま放置して幾年月が経過。だったのだが。

 2021年3月3日(水)放送の『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』。この数日前に報じられた、3月いっぱいでテレビ東京を退社するということに関して、その理由や、経緯や、今後などを、番組冒頭でリスナーに報告した佐久間宣行が、その話の締めにかけたのが、「俺たちの明日」だった。

 

 めちゃめちゃ感動した。

 なんていい曲なんだ! と思った。

 曲がアウトロにさしかかるあたりでは、もう、ほとんど、感極まって泣いていた。

 で、そういう感情に陥った自分に、びっくりしたのだった。びっくりしたというか、混乱した、と言ってもいい。

 なんなんだ、この俺の「感情の掌返し」は。佐久間さんが人生の岐路に立って決断をした、という話をした(笑いを大量に交えながらだけど)、その流れで聴いたら、「ああっ、すげえいい曲!」と大感動。って何? どういうこと?  簡単すぎない? 俺。

 べつに佐久間さんの行く末に関して、そこまで親身になって心配していたわけでもなかったのに。いや、興味はあったし、おもしろがってはいたけど、あんな優れたスター・プロデューサーの独立に対して、「心配」とか「共感」とかの気持ち、そもそもあんまり持ちようがないし。

 あとでツイッターを見たら、「あの話のあとにあの曲、さすが佐久間さん」とか「あの曲やっぱり最高」みたいな賛辞の言葉が、いくつもツイートされていた。いや、そのとおりです。私もそう感じました。感じましたが。

 

 あと、その退社トークの後半での、佐久間宣行の、この発言。

「サラリーマンをやめた途端に、金髪にする人いるでしょ。石井(玄/ディレクター)もさ、ミックスゾーンをやめてニッポン放送に入社するまでの間、金髪だったよね。俺、あれ、超ダセえと思ってたからな(笑)」

 僕は、自分と同じ歳の美容師(男性)に、長年、髪を切ってもらっている。以前から、彼はよく、僕の髪を切りながら「いっそモヒカンにしちゃいます?」とか軽口を叩いていたのだが、6年前、会社を辞めてフリーのライターになって、最初に切ってもらっている時、「あ、べつにもうモヒカンにしてもいいんじゃん!」と思った。その瞬間、無性にそうしたくなり、彼に伝えた。

 そしたら「いやあ、ないでしょ」と、すんげえ冷静に却下された。

 いやあ、よかった、却下されて。