「プレミアムグリーンカード」の話
東京都世田谷区野沢に本店がある有名ラーメン店「せたが屋」グループが、「せたが屋直営店共通お得意様カード」という施策を始めた。
ということを、この間、グループ内の店「ふくもり」に行って、知った。
要はポイントカードであって、1回行けば1つ押してもらえる、5個貯まればトッピング無料、10個貯まればサイドメニュー無料、というところまではオーソドックスなやつなんだけど、さすがせたが屋グループというか、これに「プレミアムグリーンカード進呈」という特典を付けているのだ。
このポイントカード、50ポイントでいっぱいになるんだけど、1年間の期限内にそこまで到達すれば、そのプレミアムグリーンカードがもらえる、と。
で、そのプレミアム特典というのが……そのまま書き写しますね。
Tシャツ or どんぶり or 前掛け・せたが屋グッズを進呈!!
トッピング1品 or 麺大盛 or 替玉・永久に無料!!
せたが屋イベントへご招待!!
の、3つなのです。
ひとつめと3つめはまあいい。問題はふたつめだ。
トッピング1品か、麺大盛か、替玉が、永久に無料。
「大盛券」をサービスでくれる店や、最初から「大盛無料」を謳っている店はあるが、そういうことをしていないせたが屋グループに「永久に」と言われると、相当に心動かされるものがある。
ただし、人に貸与はできないと書いてあるので、私が死ぬまで永久に、ということだが。
「2玉まで替玉OK」の博多ラーメン屋や、とんでもなく大盛のつけめんを並と同じ料金で出す店もあるが、「永久に」という言葉をラーメン界に持ち込んだのは、せたが屋グループが初めてではないか。
というか、これほどまでに「永久に」という言葉に弱かったのか、俺は。知らなかった。
という意味でも、今、動揺している。
落ち着け俺。「大盛無料」や「2玉まで替玉OK」の店も、事実、「永久に」と変わらないじゃないか。期限を切ってないんだから。なのになぜ「永久に」と文字にされると、心が乱れるのか。
子供の頃、松本零士の熱心なファンではないのに、『銀河鉄道999』だけはやたら好きだったのも、あの「機械の体になって永久の命を手に入れる」という設定に惹かれたのかもしれない。
なんだろう。別に永久に生きたいとか願ってないのに。むしろ、子供の頃、手塚治虫の『火の鳥』を読んで「永久に死ねないのって死ぬよりも地獄だな」とか思ったのに。
そんな重たいことを書く必要はなかった。
あと、『銀河鉄道999』、ほんとは確か「永遠の命」という言い方だったのに、話の辻褄を合わせるために「永久の命」と書き換えもした。
プレミアムグリーンカードの話に戻る。
これを手に入れるには、ポイントカード発行日から1年以内に、せたが屋グループのラーメンを50杯食べなければならない。
公式サイトを見ると、せたが屋グループのラーメン店は、せたが屋、ひるがお、俺式、ラーメンゼロPLUS、ふくもり、桃の木の6種類で、お店はニューヨークや台湾も合わせて計18店舗。そのうち都内は12店。そこで、1年に50杯。
「せたが屋直営店共通」と書いてあるが、公式サイトを見てもそれぞれの店が直営店なのかそうじゃないのかの記述がないのが、ちょっと気になる。全部直営店なのか、直営店とフランチャイズ店が混じっているのか、わからない。
「書かれてないってことはこの18店舗はすべて直営なんでしょう」とも考えられるし、「わざわざ『直営店共通』って書くってことはそうじゃない店もあるんでしょう」と捉えることもできるが、面倒なのでここは「18店舗全部直営、もしくは俺が行きそうな範囲の店は直営」ということにして、話を進めることにする。
さて。自分がラーメンを年間で50杯食っているか数えると、余裕で食っている。
平均すると週に2回か3回くらいだから、1年で104杯から156杯は食っていることになる。ずいぶん幅があるな。じゃあ、まあ、間をとって130杯、ということにしよう。いずれにせよ、「だからおまえ血圧高えんだよ」と、確実に医者から怒られる数ではある。
年間で130杯。じゃあ50杯ぐらい余裕じゃん。と思うが、130杯のうち3分の1以上をせたが屋グループに支配されると思うと、ちょっと、いやけっこう、いやいやかなり、憂鬱なものがある。
僕が人生でもっとも食っているラーメンは天下一品だが、それとて現在は、週に1回も食っていない。月に3回としても、年間で36杯。
それに、そもそも僕は、ラーメン屋を目指してどこかまで行く、ということをほぼしない。
行った先によさげな店があったら寄ってみる、という方針で、せたが屋グループの中でもっともよく行くふくもりも、そっちのほうを通る用事があったら行く、という通い方なので、多くても月に1回とかそれくらいだ。
ふくもりとせたが屋&ひるがお本店(昼はひるがお、夜はせたが屋)はすぐ近くにあるので、そのへんに住んでいれば3種類をローテーションで食うことにより、年間50杯を達成できそうな気もするが、そのために引っ越す気には、さすがにならない。かといって、今の家から店まで、昼や夜中に自転車で通う気にもならない。
やはり無理だろうか。
1年で50杯という数は余裕でクリアなのに、ちょっと口惜しい気がする。
がんばればいけるのに、そこで「がんばりたくねえ」という気持ちを折ることができないのも、さらに口惜しい。己のその意固地さで、これまでいろんな人生のチャンスを逃してきたのではないか、という疑いまでわいてくる。
あ。今気づいたけど、プレミアムグリーンカードって、アメリカのグリーンカードとかけてるんですね。永住権取得の。
それから、直営店か否かなどを調べようと、せたが屋グループの公式サイト内をいろいろ探していて、「会社案内」の「沿革」のところを見て、出したけどつぶれちゃった店も実はけっこうあるんだな、ということを知ったりもしました。せたが屋グループ、大人気で連戦連勝、というイメージがあったので、意外でした。
あともうひとつ。
プレゼントの、どんぶりと前掛けはまだわかるが、Tシャツはいらねえよ。と思った時点で、記憶によみがえったこと。
僕は大学時代を京都ですごしたのだが、当時、地元のローカル局であるKBS京都には、天下一品一社提供の番組があった。
正確な年は忘れたが、大学2回生から4回生の間だったので、1988年か1989年か1990年。シーガル・セレクションという地元の女性バンド(のちにシーガルズという名前でメジャーデビューした)がレギュラーMCの番組だったんだけど、毎週番組の終わりに視聴者プレゼントで、「天下一品のTシャツを×名様に」って告知していたのです。
いらねえよ! 従業員が着るやつと一緒じゃん! 店のユニホームをプレゼントしてどうする! と、毎週大笑いしていたものです。
なお、今年9月に京都に行った時、ホテルでテレビをつけたら、KBS京都で天下一品一社提供の番組、まだやっていて、社長自ら出演しておられました。びっくりしました。Tシャツプレゼントは、現在は行っていないようでした。
調べたら、公式サイトが出てきた。これ。http://www.pcube.co.jp/teppen.html
フェスの時を除き、食い物のことは書かない。
という自己ルールをなんとなく決めている上に、特にラーメン関係に関しては、そのスジのプロフェッショナルがすぐ身近にいるので(田中貴といいます。ラーメン評論の傍ら、ベースを弾いたりもしている男です)、自分が何か書くことはまずないであろう。
と思っていたが、これなら味に一切触れずに書けるな、と思って、書いてみました。
書いたからなんなんだ、という気持ちでいっぱいです、今。
うっかり読んでしまった方、時間をドブに捨てたとお思いでしょうが、書いた私もそうなので、痛み分けということでご勘弁ください。